こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

フリーランサー NY捜査線

otello2012-10-30

フリーランサー NY捜査線 Freelancers

監督 ジェシー・テレロ
出演 カーティス・“50セント”・ジャクソン/ロバート・デ・ニーロ/フォレスト・ウィテカー/マルコム・グッドウィン/ライアン・オナン
ナンバー 264
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

法の番人たる者は高い見識と強い正義感を備えているはず。ここで描かれる警察官は、そんな市民の願いを根底から否定する。そして腐敗した組織は理想に燃える若者たちの思いを瞬く間に打ち砕いていく。映画は、新人警官たちが先輩たちのあまりにも低いモラルにあきれつつも徐々にどす黒く汚染されていく過程を追う。正直者は生き残れない、しかし堕落はしたくない。勤務中にドラッグを吸い、平気で人種差別するだけでなく、挙句の果ては犯罪者のカネを平気でくすねる、権力を背景にした暴力装置となった先輩や上司を憎みつつ、いつしかそこでのルールを身に付けていく主人公の苦悩がリアルだ。

殉職した父と同じNY市警に採用されたジョナスは、親友のAD、ルーカスらと共にクイーンズの犯罪多発地区に配属される。ジョナスはさっそく父の相棒だったサルコーネに取り込まれ、麻薬ディーラーから上納金を回収せよと命令される。

更生したとはいえ、前科もあるジョナスのような人間が警官になれることにまず驚く。彼らの先輩たちもバッジがなかったらただのチンピラ、麻薬ディーラーたちのほうが少なくとも“真剣”に働いているのは確かだ。結局、警察も麻薬組織もどこかで繋がっていて、お互い暴走しない限りは暗黙の了解を守っている。ジョナスがサルコーネに組織内での処世術を叩き込まれる姿は、社会でうまくやっていくには誰を後ろ盾にするかを見極めろという普遍的な教訓になっている。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

その後ジョナスは、サルコーネが麻薬王・バエズの影響下にあると聞かされた上、父を殺した犯人を知り、サルコーネとバエズ、さらに麻薬捜査官を巻き込んだ計画を実行に移す。だが、そこに至る映像はスリルやサスペンスとは無縁な絶望的な閉塞感に支配されている。もはや高潔な警官ではいられない、それでもどっぷりと悪に染まるほど良心は失ってはいない。犯罪者とは持ちつ持たれつ、ただ軸足は体制の側に置いておこうとするジョナスの諦観にも似た選択は、組織犯罪を取り締まる警察官の現実なのだ。。。

オススメ度 ★★*

↓公式サイト↓