こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

愛について、ある土曜日の面会室

otello2012-11-10

愛について、ある土曜日の面会室
QU'UN SEUL TIENNE ET LES AUTRES SUIVRONT

監督 レア・フェネール
出演 ファリダ・ラウアジ/レダ・カテブ/ポーリン・エチエンヌ/マルク・バルベ/ヴァンサン・ロティエ/ジュリアン・ルーカス/デルフィーヌ・シュイヨー/ディナーラ・ドルカーロワ/ミカエル・エルペルディング
ナンバー 270
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

恋人と自分のために出直したい。わが子の真実を突き止めたい。彼の愛が本物なのか確かめたい。3人の男女はそれぞれの理由で刑務所の面会室を訪れる。囚人が唯一外界との接点を持てる場所で、煮詰まった心は爆発し、切なさばかりが後を引く。映画は、うだつの上がらない男と、息子を殺された母、ボーイフレンドに夢中の少女が、小さな部屋に向かうまでの思いを描く。今のままではどん底にいるだけ、血縁ではない受刑者に会いに行く彼らの事情は複雑だが、そこを訪問することで生まれる未来への新たな一歩がわずかな光明をもたらしている。

仕事も恋人との仲もうまくいかないステファンは、ピエールという男から親友の身代わりに刑務所に入ってくれと頼まれる。息子の死を受け入れられないゾラは、服役中の犯人に話を聞こうとその姉に近付く。ロシア人少年と恋に落ちたロールは、彼に面会するために献血スタッフに付き添ってもらう。

わが子が何故死なねばならなかったのか、警察の説明では納得せず、ゾラは犯人の口から息子の最期を聞きだそうとする。いつのまにかゲイになり、親には言えない秘密を持ってしまった彼はどんな暮らしをしていたのか。犯人に接近するために彼の姉の信頼を得、犯人も苦しみ家族を悲しませていたと知る。もはや恨みはない、ただ、息子をきちんと理解してやるのが母の義務。そんなゾラの哀しい決意が沈んだトーンの映像からリアルに浮き上がる。また、ステファンはピエールの提案に乗るが、覚悟が足りず苛立たせる。行動しなければ何も解決しない、カネは欲しいが刑務所に入る根性もないダメ男の逡巡を恋人が加速させる。ステファンの優柔不断さはそのまま人間の弱さを象徴していた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

なかなか会えない相手のもとにわざわざ足を運ぶ、その、直接顔を見て話す行為の中に、苦悩や不安、希望や安らぎ、後悔やあきらめといった感情が充満する。面会室に凝縮された喜怒哀楽はまさに人生の縮図だった。

オススメ度 ★★★

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