こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

サイド・バイ・サイド フィルムからデジタルシネマへ

otello2012-11-13

サイド・バイ・サイド フィルムからデジタルシネマへ
SIDE BY SIDE

監督 クリス・ケニーリー
出演 キアヌ・リーブス/マーティン・スコセッシ/ジョージ・ルーカス/ジェームズ・キャメロン/デビッド・フィンチャー/デビッド・リンチ
ナンバー 273
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

もう後戻りはできないところに来ている映画のデジタル化。撮影した直後にラッシュが見られるスピードと何度も撮り直しがきく経済性がクリエーターたちの心をつかむ。さらにカメラの軽量化はこれまで考えられなかった躍動感や登場人物の内面に迫る撮影技術を生み出し、解像度を高めてフィルムの質感に近付く。'70年代からこの分野に手を付けた先駆者・G.ルーカスといち早くCGと3Dの可能性を見抜いたJ.キャメロンはデジタル化の先頭を走り、M.スコセッシやS.ソダーバーグもフィルムでは成しえない表現ができると積極的。そんななか、C.ノーランはフィルムにこだわり続ける。

自らも映画製作者として大いにデジタル化に興味を持つキアヌ・リーブスは、変革の波の最前線に立たされた映画監督、撮影監督、その他ポストプロダクションに携わるスタッフ、カメラメーカーの技術者たちにインタビューを重ねる。

フィルム用カメラは今後革新が望めず、映画館も徐々にデジタル化を進めるなど、デジタル化の流れは止まらないだろう。一方で、デジタルには保存法が確立されていないといった問題点も提示されるが、技術の進歩が解決していくはず。問題はネット配信された映画をスマホタブレットで見たつもりになる人々。彼らが、「これは」と思う映画だけでも映画館に足を運ぶ習慣を持ってくれればよいのだが。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

デジタル化の最大の長所は、監督の頭の中にあるどんなヴィジョンでも視覚化出来ること。ところが、CGを多用し過度に装飾された色彩やサウンドの映像は人間の知覚の限界をはるかに越えてしまい、物語に身を浸す邪魔をする。それは精緻に再現すればするほどリアリティがなくなるという弊害をもたらすのだ。結果的により強い刺激を求めて映像はもっと過激になり、その手の映画を何本も見続けると不感症になっていく。「インセプション」に斬新な衝撃を受けたのは、フィルムだったのが原因のひとつとあらためてこの作品に気付かされた。。。

オススメ度 ★★★

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