こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

映画と恋とウディ・アレン

otello2012-11-16

映画と恋とウディ・アレン WOODY ALLEN: A DOCUMENTARY

監督 ロバート・B・ウィード
出演 ウディ・アレン/ペネロペ・クルス/スカーレット・ヨハンソン/ダイアン・キートン/ショーン・ペン/クリス・ロック/ミラ・ソルヴィーノ/ナオミ・ワッツ/ダイアン・ウィースト/オーウェン・ウィルソン/マーティン・スコセッシ
ナンバー 281
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

書き連ねたジョークを投稿して、高校時代にはプロのライター並みの収入を得ていたウディ・アレン。映画の中で繰り広げられる軽妙洒脱なセリフの数々は当時すでに基礎ができ上がっていたのだろう。観客が共感を覚えるシチュエーションを斜めから見つめ、スパイスの効いたオチを付ける。その技術は小劇場で磨きがかかり、さらに頭の中のイメージは映画という形に昇華されていく。以来40年にわたって彼は世界中の映画ファンを刺激し魅了してきた。映画は、いまや主演スターより名前が大きくクレジットされる数少ない映像作家のひとり、ウディ・アレン半生を追う。

NY・ブルックリンで幼少期を過ごしたアレンは言葉を操る才能に目覚め、やがて自作のネタでコメディアンとして舞台に立つようになる。その後、映画の脚本を手掛けるが、現場でズタズタにされた経験から監督になる決意をする。

ダイアン・キートンとの出会いと「アニー・ホール」の成功、ハリウッド流の映画作りとは一線を画した姿勢がスターたちに、“アレン作品に声がかかるのがステータス”と言わしめる。脚本、すなわちアイデアの結晶を他人に任せるのではなく自らの手で映像化する過程で、決定権を握る反面駄作になるのではといった不安が彼を苛むが、クリエーターの苦悩を垣間見せる場面がまた、彼が映画の中で演じてきた主人公たちに重なって興味深い。'80年代から'90年代前半に発表された、知的だが皮肉に満ち、コミカルだがスリリングな作品群に彼の生き方が投影されているようだった。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

21世紀になって欧州に拠点を移して低迷期を脱するが、最新作「ミッドナイト・イン・パリ」に登場した歴史上のアーティストと同列になることが彼の夢なのかもしれない。なのに、NYの街角を歩いていてもまったく“有名人オーラ”を発しない自然体が、普通の人々の日常に潜むちょっとした非日常を描き続けてきたアレンの魅力を象徴していた。

オススメ度 ★★★

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