こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

マリーゴールド・ホテルで会いましょう

otello2012-11-17

マリーゴールド・ホテルで会いましょう The Best Exotic Marigold Hotel

監督 ジョン・マッデン
出演 ジュディ・デンチ/ビル・ナイ/トム・ウィルキンソン/マギー・スミス/デブ・パテル/ペネロープ・ウィルトン/セリア・イムリー/ロナルド・ピックアップ
ナンバー 277
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

息がつまりそうな雑踏、過剰なまでの色彩と喧騒、燦々と降り注ぐ陽光。生を権利ではなく恩恵ととらえる人々は日々の暮らしに喜びを見出し感謝の念を忘れない。長年住み慣れた街を引き払って旧植民地にやってきた英国の老人たちは、そんな風景に圧倒される。深い思い出を探ろうとする者、一からやり直そうとする者、心の壁を取り払う者、なかなかなじめない者、映画はインドを終の住処に選んだ彼らの日常を追う。主に肉親との葛藤で疲れ果てた英国での生活から解放され、新たな人間関係を結んで残り少ない未来を楽しもうとする過程は理想の老後と呼ぶにふさわしい。

社会をリタイアした7人の男女は、各々の理由からインドにある豪華ホテルでの滞在を思いつき飛行機に乗る。ところが乗継便は欠航、バスに長時間揺られて着いた先は崩れかけたぼろホテルだった。

落ち着いた後、一行は観光や病院、社交、仕事探しなど活動を始める。それらの人間模様のなかで、元判事だったグレアムはインド人に偏見はなく、召使いだったミュリエルが極端な差別主義者なのとは対照的だ。ミュリエルの有色人種を見下した態度は、彼女自身が英国ではずっと低い身分に甘んじていた過去への裏返しなのだろう。だが、最下層カーストの娘に身の回りの世話をされると、使用人の気持ちを理解できる彼女は徐々にその「上から目線」を改めていく。カースト制度の残滓が、かえって人の値打ちに人種や階級は無関係と訴えていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

7人がみな目的を達したわけではない。それでも、目の前で起きた出来事を受け入れ、前向きに考えればおのずと道は開けてくる。ここでもう一度生きる希望をもらったイヴリンは、母の反対で結婚をあきらめかけていたホテルの支配人・ソニーに「本当の失敗はなにもしないこと」と現状を打開するために行動を起こせと促す。小さくてもいい、挑戦する精神を失わなければいくつからでも人生を豊かにしていけるとこの作品は教えてくれる。

オススメ度 ★★★

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