こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ふがいない僕は空を見た

otello2012-11-19

ふがいない僕は空を見た

監督 タナダユキ
出演 永山絢斗/田畑智子/窪田正孝/小篠恵奈/田中美晴/三浦貴大/銀粉蝶/原田美枝子
ナンバー 284
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

不妊症を義母に責められる女は高校生とのセックスを唯一の逃げ場にしている。そこでしか自己の存在を確かめられず、彼女は若い肉体に溺れていく。「いっぱい出して」と懇願する言葉の裏にあるのは、心が通わぬ夫よりも空想の恋人の精を体内にとどめておきたいという願い。誰かに気持ちを分かってもらいたい、彼女の切ない思いは現実逃避の世界でしか叶わない。そんなヒロインを田畑智子が壊れそうなほどの繊細さで演じている。映画はふたりの愛と破局を通じて、人生にがんじがらめにされた人々の閉塞感を描く。それは喪失感にも似た諦め、すでに未来への希望を失った者にとって、空は青いほど寒々と感じるのだ。

アニメ好き主婦・里美と知り合った卓巳は、彼女の部屋を訪ねてコスプレプレイを続けている。ある日、同級生に告白されたのを機に卓巳は里美と別れようとするが、里美は「呪ってやる」と卓巳をののしる。

里美の不義を疑う義母によって盗撮されていた里美と卓巳の性行為は動画サイトで公開される。さらに卓巳の親友・良太はプリントしたその画像をばらまくのを手伝う。ネットに流したのは里美なのか、良太はなぜ卓巳を苦しめるのか。それらは、どんな人間も笑顔の裏に底知れぬ悪意や嫉妬を抑え込んでいて、ふとしたきっかけで爆発することを示唆する。だが、時制をシャッフルしたり唐突に良太の話に切り替わるなど、編集の意図が全く理解できず戸惑いばかりが残る。良太のエピソードはカットして上映時間を短くすれば引き締まった印象になったはずだ。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

その後、実家が助産院の卓巳は出産を手伝ったりするが、妊婦が泣き叫んでも彼にできるのは体をさすってやるくらい。また、里美の不妊も彼女の先天的な肉体の問題で卓巳に責任はない。確かに妊娠や出産において男は無力、だからといって卓巳が「ふがいない」と思う必要があるのだろうか。登場人物の行き場のない心情には共感するが、物語としてのまとまりに欠ける作品だった。

オススメ度 ★★

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