こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

カラスの親指

otello2012-11-27

カラスの親指

監督 伊藤匡史
出演 阿部寛/村上ショージ/石原さとみ/能年玲奈/小柳友/ベンガル/ユースケ・サンタマリア
ナンバー 291
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

少し前までは見知らぬ他人のはずだった2人のオッサンと3人の若者が、いつの間にか同じ屋根の下で生活している。誰もが哀しい過去と胡散臭い経歴を持ち、隠し事をしているからこそ表面上は仲良く振る舞わなければならない。そんな男と女が復讐のために絆を深めていく。本当の家族ではないが、それでもお互いを思いやる気持ちが芽生え、にぎやかで楽しいかけがえのない日々になっていく。詐欺師が主人公なのに一昔前のホームドラマのようなぬるくて甘い語り口に中盤まではうんざりしたが、それが後の壮大な伏線となる構成に舌を巻いてしまった。できすぎた話には必ず裏があるのだ。

その日暮らしの詐欺師、タケとテツは、スリで捕まりそうになった少女・まひろを助ける。後日、アパートを追い出されたまひろは姉のやひろとその恋人を連れてテケたちの家に転がり込んでくる。しかし、その家にもタケを狙う怪しげな男が姿がちらつき始める。

タケもまひろ姉妹もかつて闇金屋・ヒグチに人生を台無しにされ、今またヒグチとの対決を余儀なくされる。ヒグチの影におびえて生きるよりは、ヒグチときちんと決着をつけたい。そのために彼らはヒグチのカネを盗んで破滅させる計画を練る。アジトを構え盗聴器を仕込んだ携帯電話を売りつけヒグチの動向を探る5人。ところが、そこでも通常の犯罪映画にあるような躍動感や緊張感、斬新な犯行の手口を見せるのではなく、あくまでタケを中心とした疑似家族的な結束ばかりが描かれる。ある意味予想を裏切る展開ではあるが、もっとスリルを味わいたかった。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

無事目的を果たした5人はそれぞれの道を歩み出す。だが、そもそもタケたちとまひろたちが出会ったのは偶然なのか、不確定要素が多かったヒグチのカネを奪う作戦がうまくいったのはなぜか。すべてが必然だったというどんでん返しは、まんまと一杯食わされた新鮮な驚きよりも、人と人との関係から生まれる優しさに満ちていた。

オススメ度 ★★*

↓公式サイト↓