こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

悪人に平穏なし

otello2012-11-30

悪人に平穏なし NO HABRA PAZ PARA LOS MALVADOS

監督 エンリケ・ウルビス
出演 ホセ・コロナド/ロドルフォ・サンチョ/エレナ・ミケル/フアンホ・アルテロ/ペドロ・マリ・サンチェス/ナディア・カサード
ナンバー 293
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

態度が気に食わないヤツには警官バッジをちらつかせ、無礼な振る舞いにはひじ打ち見舞い、歯向かうものには容赦なく引き金を引く。カネを盗んだりはしないが、そのあとに証拠を隠滅するなど抜け目がない。そんな、悪徳警官というには破滅的な心の傷と暗い過去を背負った主人公はアルコールの腐臭まみれのやさぐれた空気を漂わせる。だが、その本性はかつて特殊部隊に身を置いていたタフで熱血の一匹狼。己の悪事を棚に上げより大きな陰謀の尻尾を見つけると我を忘れて食らいついていく。映画は彼の孤独な戦いにカメラを向け、堕ちたヒーローの生きざまを描く。

飲んだくれた挙句クラブオーナーと従業員の計3人を射殺した刑事・サントスはもみ消しを図るが、目撃者の存在に気づく。被害者と目撃者の背後を洗っていると、彼らは大掛かりな麻薬密輸に絡み、さらに暗躍するイスラム系のテロ組織に突き当たる。

人生に倦んでいたサントスは偶然嗅ぎつけた血の臭いに敏感に反応する。簡単な仕事ではない、大物の悪党相手の命がけの死闘が待ち受けているかもしれない。ところが、彼にとってそれは抑えきれない暴力の本能を解放してくれる千載一遇のチャンス。警備の任務を投げ出し、単身尾行張り込みを続けるサントスの目は、獲物を狙う野獣の輝きを取り戻し、テロ計画の関係者に迫っていく。手柄を立てたいのではない、正義のためでもない、ただ、遠慮なく殴りナイフを突き立て銃を分ぶっ放せる敵を見つけたことに、恍惚感に似た興奮を感じているのだ。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

一方で、クラブ殺人事件を追う判事たちはサントスを疑い、捜査の網を狭めていく。彼らに追われながらもテロリストのアジトを突きとめるサントス。もはや拳銃などでは満足できず、破壊力抜群のショットガンを携えて乗り込んでいく。自ら望んだような死に場所を得たサントスの姿は「悪人に平穏なし」というより「悪人の平穏な死」に見えた。。。

オススメ度 ★★★

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