こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ジャッジ・ドレッド

otello2012-12-12

ジャッジ・ドレッド DREDD

監督 ピート・トラヴィス
出演 カール・アーバン/オリヴィア・サルビー/リナ・ハーディー
ナンバー 301
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

あらゆる感覚が鋭敏になり、モノの動きが極端にスローに見える。飛び散るガラス片、発射された銃弾、横転するクルマ、それらを知覚するドラッグ使用者たちの主観映像がスタイリッシュで独創的だ。そして彼らを取り締まる主人公がスロットルを吹かすバイクは無骨な装甲が施され、重厚な排気音と共に権力を背景にした暴力装置の象徴となる。映画は高層ビルが林立するスラム化した大都市、警察と裁判官を兼任する絶大な権限を持つ執行官が悪党の巣窟で戦う姿をとらえる。人を殺した者、銃口を向ける者は射殺、その問答無用即断即決の解決策は爽快さすら覚える。

ママと呼ばれる女ボスが支配する超高層ビルで殺人事件が発生、執行官・ジャッジのドレッドは見習いジャッジのカッサンドラを連れて現場に向かう。容疑者を拘束するが、ママはビルを封鎖、2人は袋の鼠となる。

通信も遮断され孤立無援となった彼らは、ママの組織と闘う道を選ぶ。一方でビルの住人はみなママの言いなり、武装したチンピラは数十人、さらにすべての行動をモニターで監視されている。閉鎖空間での圧倒的不利な状況は次第に2人を追い詰めていくが、ドレッドの心は絶対に折れない。カッサンドラもサイキックパワーで敵の思考を読もうとする。治安を乱す犯罪者を決して許さない強固な信念こそ、最近食傷気味の迷えるヒーローに対する強烈なアンチテーゼとなっていて、善悪をスパッと割り切った物語の姿勢がかえって小気味よい。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがてママに買収されたジャッジたちがドレッドたちを始末するために呼び寄せられる。同等の能力と装備を持った彼らとの銃撃戦で被弾しても、自分で傷口を縫うしかないドレッドの背中に、秩序なき時代に正義を貫かなければならない男の孤独がにじみ出ていた。最後までヘルメットで素顔を隠し単なる記号であり続ける新しいタイプのヒーローはいつか暴走しそうな予兆をはらみ、今後の展開に期待が膨らむ。

オススメ度 ★★★

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