こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

明日の空の向こうに

otello2012-12-14

明日の空の向こうに JUTRO BEDZIE LEPIEJ

監督 ドロタ・ケンジェジャフスカ
出演 オレグ・ルィバ/エウゲヌィ・ルィバ/アフメド・サルダロフ
ナンバー 292
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

あの空の向こうには何があるのだろう。汚い駅舎で寝泊まりしていた浮浪児たちは、きっと希望が待っていると信じて地図もコンパスも持たずに歩き続ける。頼れるのは仲間だけ、水と食料を調達しながらの旅は、もともとまともな暮らしをしていなかった少年たちにとっては冒険というよりどこか日常の延長のような気楽さが漂っていて、そこに命の危機を感じるほどの切迫感はない。カメラはそんな、ポーランドでの生活を夢見るロシアの子供たちの道行に寄り添う。劣悪な環境が、逆にこんなにも成長を早めるものかと驚かされる。

ヴァーシャは友人のリャパからポーランドに行こうと誘われ、弟のペチャと3人で貨物列車に忍び込む。途中、リャパの知人の老人や新婚カップルの好意を受け、国境付近にたどり着く。

朝市でパン屋のオバサンに媚びを売って施しを受けるペチャ。新婦をほめて小銭をもらったりもする。女心をつかむ術は天才的、口のうまさとチャーミングな笑顔はとても6歳と思えないほど老成している。孤児として生き抜く知恵なのが、彼の無邪気さに見せかけた狡猾さがかえって痛々しい。一方で薄汚れたテディベアを大切にするなど幼さも残している。その精神的成熟のアンバランスさが、親の愛を知らずに育った彼の心を象徴していた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがて3人は無事ポーランドの小さな村に入るが、村の子供たちがロシア人を馬鹿にした歌で3人をはやし立てる。このあたり、ロシア人に対する歴史的な恨みが染みついたポーランド人の本音が透けて見えて興味深かった。ただ、映画は役人に見つかったら捕まるといったスリルや家族の思い出に浸るセンチメンタリズムは一切なく、エンタテインメント性とは一線を画した映像は平板で間延びした印象は否めない。よく考えるといくらたくましい子供たちでも、11歳10歳6歳の3人のみでこれほどの長旅は不可能なはず。彼らは一体何のメタファーだったのか。。。

オススメ度 ★★*

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