こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

エンド・オブ・ザ・ワールド

otello2012-12-21

エンド・オブ・ザ・ワールド
SEEKING A FRIEND FOR THE END OF THE WORLD

監督 ローリーン・スカファリア
出演 スティーブ・カレル/キーラ・ナイトレイ/コニー・ブリットン/アダム・ブロディ/ロブ・コードリー
ナンバー 307
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

絶望してうろたえるわけでもない、希望を捨てずに悪あがきしているわけでもない、あきらめてバカ騒ぎに興じるわけでもない。ただ平穏な暮らしこそ第一と考える主人公は終末が間近に迫っても淡々とした生活態度を崩そうとしない。まるで普段通りにしていれば、その日を何事もなくやり過ごせると信じているかのように。物語はそんな男が自分に素直な女と出会い共に旅するうちに、過去に置き忘れてきた大切なものを取り戻そうとする姿を描く。妻に去られ家族も友人もおらず、誰にも愛されていないと思い込んでいた彼が、実は他人を愛さなかったのが原因と気づく過程は寓意に満ちている。

小惑星衝突で地球滅亡が決定的となったある日、ドッジは同じアパートに住むペニーに高校時代の恋人・オリヴィアからの手紙を渡される。ドッジは彼女に会うためにペニーのクルマで出発する。

残された時間はあとわずかなのに、ドッジはどこか他人事のごとく世界を見つめている。知人が気を効かせてパーティを開いて女を紹介しても、居心地が悪い。元々熱く生きるタイプではない、妻の裏切りを知ったときだけは激昂するが、その後の行動も達観している。彼が死ぬ前に見つけた唯一のすべきことは、青春を輝かせてくれたオリヴィアとの再会。だが、その道中でもドッジは硬い表情を変えず目の前でおこる非日常に対し傍観者であり続ける。ドッジのノリの悪さは、精いっぱい最後の願いを叶えんとするペニーとは対照的で、コミュニケーションの苦手な人間の苦労がにじみ出ていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

オリヴィアへの思いを伝えたドッジはペニーと一緒に新興宗教らしき一団に祝福されてやっと楽しそうな笑顔を見せる。しかしそこに至るまで、なかなかドッジ自身が人生の主人公になろうとはしないのはもどかしかった。ずっとわだかまっていた父との和解も、ハーモニカという小道具以外にも父子の感情を刺激してもよかったのではないだろうか。。。

オススメ度 ★★*

↓公式サイト↓