こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

つやのよる

otello2013-01-30

つやのよる

監督 行定勲
出演 阿部寛/小泉今日子/野波麻帆/風吹ジュン/真木よう子/忽那汐里/大竹しのぶ/羽場裕一/荻野目慶子/岸谷五朗/渡辺いっけい/永山絢斗/奥田瑛二/田畑智子
ナンバー 22
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

魔性の女が死の床についている。終末病棟に通い最期まで尽くそうとする夫は、彼女と深い関係があった男たちに危篤を知らせるが、見舞いに来る者はいない。男たちにとっては人生を翻弄され運命を狂わせされたファム・ファタール、女たちにとっては自分の男を惑わせる憎むべき存在。物語はそんなヒロインにかかわった男たちの現在の「女」の肖像を描き、彼女の人物像を再構成しようとする。それぞれのエピソードの「いまを生きる女たち」の日常に潜む異常性を垣間見るなかで、ひとりの人間が生きそして死んでいくのはどういうことなのかを問うていく。

大島の病院でひっそりと末期を迎えつつある艶(つや)。夫の松生は艶から聞いていた過去やパソコンのログから、いとこや元夫、愛人らに連絡を取る。彼らはみな今は艶と別れ、決して艶を思い出そうとはしない。

艶に絡んだ男たちが愛する女は、みなどこか艶の面影があるのだろう。芯が強い作家の妻、虚栄心に満ちた評論家、すぐセックスに流されるOL、無邪気な笑顔の未亡人、艶に夫を奪われた元妻。それらの共通点はすべて艶の魅力となって男たちを溺れさせていたはず。だが、いちばん艶を思い艶に苦しめられたのは松生自身。痩せこけ目が落ち窪み幽鬼のごとき形相になった松生を阿部寛が鬼気迫る表情で演じ切っている。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ところが、直接艶と肌を重ねた男たちに語らせるのではなく、艶をよく知らない女たちのフィルター越しに艶の真実を浮かび上がらせようとする構成は、余計に話をこじらせてまどろっこしくしているだけだ。小説ならば想像力を刺激する設定かもしれないが、女優という具体性のなかではイメージがばらつくばかり。女たちにわずかでも一貫したアイコンを持たせてほしかった。ただ、艶の乳房に刻まれたいくつもの歯形は松生がつけたものと直感し、何も告げずに去った松生の元妻の感情には共感できたが。。。

オススメ度 ★★

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