こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ムーンライズ・キングダム

otello2013-02-13

ムーンライズ・キングダム MOONRISE KINGDOM

監督 ウェス・アンダーソン
出演 ブルース・ウィリス/エドワード・ノートン/ビル・マーレイ/フランシス・マクドーマンド/ティルダ・スウィントン/ジャレッド・ギルマン/カラ・ヘイワード
ナンバー 32
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

ドアのない屋敷の中を平行移動するカメラがとらえた家族の肖像は平和な家庭の違和感を漂わせ、双眼鏡で外界を観察している少女の孤独を物語る。厳格な規律に支配されたボーイスカウトのキャンプから突然姿を消した少年は、“不在”をもって初めて存在を認識される。居場所がないふたりは出会い、惹かれあい、希望の地に向かって旅に出る。映画は、彼らの逃避行と追う人々の葛藤を通じ、世の中のフツーからはみ出してしまった子供の生きづらさを描く。小さな島の狭い人間関係の中で手探りする幼い恋の行方が、いつしか古い価値観を変えていく過程が小気味よい。

里親から厄介者扱いされていたサムは、ある朝無断でボーイスカウトを脱退し、1年前に“運命”を感じたスージーとともに秘密の入り江を目指す。駆け落ちに気づいた大人たちは大騒ぎし、やがてふたりはボーイスカウトたちに追い詰められていく。

サムもスージーも積極的に気持ちを表に出すタイプではなく、自己表現が下手。お互いにお互いしか理解しあえる相手がいないとわかっていても、実際にふたりだけになってみると期待にときめいているはずなのにためらいが混じり、どう接していいのかわからず戸惑っている。初めての恋、初めての冒険、初めてのキス。ふたりにとって現在と未来を変える出来事なのにもかかわらず、感情的な盛り上がりからは程遠い。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

一度は引き裂かれたふたりは、良心と友情に目覚めた少年たちの助力によって再び結ばれる。だが、カメラはそこで繰り広げられるドタバタ劇をひたすら俯瞰するが、最後まで登場人物の心には踏み込んでこない。もちろんこの「劇的な展開を斜に構えた冷めた目で観察する」のがウェス・アンダーソンの持ち味なのだが、端正な映像に描きこまれた、抑制の美学でもない、人生の真実に迫るでもないが、少しコミカルな世界観は、いつもながら不思議の国に迷い込んだ戸惑いと斬新さを覚えるばかりだった。

オススメ度 ★★

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