こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

自縄自縛の私

otello2013-02-14

自縄自縛の私

監督 竹中直人
出演 平田薫/安藤政信/綾部祐二/津田寛治/山内圭哉/馬渕英俚可/米原幸佑/銀粉蝶
ナンバー 36
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

仕事では人一倍頑張っているのに、上司に叱責され部下にバカにされ、悩みを打ち明ける友人もいない。しかし家に帰れば密かな愉悦が待っている。他人に見られると恥ずかしくてたまらない、でも誰かにこの秘密を知ってもらいたいとも思う。退屈な日常の中で見つけたスリル、映画は自縛の快楽に目覚めたOLのやり場のない切なさを描く。肌に食い込む縄、目隠しと手錠。体の自由を奪うことで心は解放される、そんなささやかな冒険に逃避しなければ生きていけない彼女の性格の弱さがリアルだ。

学生時代にネットで自縛を覚えた百合亜は、恋人にふられたのを機に自重していた。広告代理店に就職し数年たった今は、部下を2人持たされ新たなプロジェクトを任されていたが、そのストレスから再び己の肉体を縄で縛り始める。

通販で買った縄を茹で干し炙り脂を刷り込む。一連の動作にいそしむ百合亜の生き生きとした表情が、いつも上司や部下の顔色をうかがうような自信のなさとは対照的。さらに行為をブログにアップして自らの変遷も記録しようとする。社会では何者でもない私でもこの世界では女王になれる、ある種性的な嗜好ではあるのだが、性的興奮とはまた違う、自己愛。OLという仮面を脱いだ素顔の私、いや、それすらも演じているだけなのかもしれない。本当の自分を探そうとしてますます迷子になっていく彼女が混迷する現代の価値観を饒舌に物語る。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ただ、彼女が働く広告代理店の環境や人間関係があまりにも作り物めいていて、TVドラマを元に頭の中で再構築ような薄っぺらさ。学生時代の恋人や百合亜の母親の異常に粘着質なキャラクターもくどすぎる。百合亜を取り巻く登場人物や設定にもっとリアリティがあれば、彼女の気持ちにも共感できたはずなのだが。あと、百合亜は下着の上から縄をかけて会社に出勤したり、自ら「放置プレイ」をするが、トイレの時はどうしていたの? 極限まで我慢するのもまた快感なのだろうか。。。

オススメ度 ★★

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