こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

逃走車

otello2013-03-02

逃走車 VEHICLE 19

監督 ムクンダ・マイケル・デウィル
出演 ポール・ウォーカー/ナイマ・マクリーン/ツシェポ・マセコ/ジス・ドゥ・ヴィリエ
ナンバー 51
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

急発進、急加速、急停止、急右左折を繰り返し、一方通行を逆走して細い路地を激走する。ステアリングを握る主人公に肉薄したカメラはその表情を間近にとらえ、彼の胸の内に湧き上がる感情を漏らさずとらえていく。怒り、焦り、不満、不安、そして事の裏側を知った後には過去に決着を着けるべく正義と良心に目覚めていく。物語は間違ったクルマに乗ってしまったせいで重大な陰謀に巻き込まれた米国人が、思い切りアクセルを踏み込むことで人生最大のピンチを切り抜けていく姿を描く。貧困と腐敗がはびこるヨハネスブルグ、荒涼としたスラムと子供ですら平気で盗みをはたらく現実がこの国の格差を象徴する。

妻に会うために南アフリカにやってきたマイケルは空港でクルマを借りる。ところが、検事局のレイチェルが縛られてトランクに閉じ込められていたことから、マイケルは市内の警察官すべてを敵に回すハメになる。

レイチェルは警察署長の犯罪を告発する証拠をつかんだために彼らに命を狙われている。思わぬトラブルに巻き込まれたマイケルはレイチェルの訴えに耳を貸すうちに、いかに行動するかの決断を迫られる。そこに至る過程で、地名も読めないような異国でただでさえ慣れない右ハンドル車にもかかわらず、ケータイをいじったりパンやドリンクを口に運ぶマイケル。まともに前方を見ずに走行するマイケルの不注意さにハラハラさせられるだけでなく、時にいら立ちすら覚える。猛スピードで爆走するよりも、わき見運転するシーンのほうがかえってスリリングという逆転の発想が楽しかった。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

レイチェルを救うには彼女を裁判所に連れて行かねばならない。しかし凶弾が彼女を襲い、濡れ衣を着せられたマイケルは指名手配され町中のパトカーに追われる。ところが映画は肝心のカーチェイスが大味なままで、最後まで手に汗握る興奮は味わえなかった。もっとミニバンの特性を生かしたドライブテクニックを見せるなり、治安の悪さを逆手に取るなどのアイデアを見せてくれればよかったのだが。。。

オススメ度 ★★

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