チャイルドコール 呼声
監督 ポール・シュレットアウネ
出演 ノオミ・ラパス /クリストッフェル・ヨーネル
ナンバー 27
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています
夫であり父親である男の暴力から逃れて見知らぬアパートに引っ越してきた母子は、息をひそめて暮らしている。それはやっと手に入れたふたりだけの幸せな完結した世界。だが、その平穏は徐々に歪みはじめ、音を立てて崩れていく。物語は神経症気味の女が追いかけてくるDV夫から息子を守ろうと奮闘する姿を追う。やがて行為はエスカレートし、彼女が暴走したとき真実が見え始めるというサスペンス仕立てのミステリーは、刃物を研ぐような鋭い静謐さと危うさを秘め、肌が泡立つようなヒロインの焦燥と恐怖が描かれる。
アナと息子のアンデシュは新しいアパートで人目を忍んでいたが、アンデシュは小学校に通い始める。ある日、アンデシュの様子をモニターするために買ったチャイルドコールに子供を虐待する音声が混線する。
アナは電器店の店員・ヘルゲに相談した後食事に誘うが、どうもふたりの会話はかみ合わない。その後民生監視員がアナのアパートに無断で入ったり、アンデシュが無口な友人を家に連れてきたりする。このあたりからアナは周囲からの刺激や変化に対して過剰に反応し、彼女の“主観”とヘルゲの視点による“客観”が少しずつズレ始める。アナは何に脅えているのか、彼女の目に映っている人やモノ・出来事はリアルなのか、現実と妄想の境目が曖昧になる過程が、暗闇で手探りしている不安感を見る者に与えていく演出は洗練されている。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
アナの言葉は一貫性に欠き、このままでは夫にアンデシュの養育権を奪われるところまで追いつめられる。そしてますます神経を高ぶらせ感情的になっていく。しかしここまで来るとオチが読めてしまい、はたして予想通りの展開。哀しいまでに強い母性はこれほどまで彼女を追い詰め、いつしか狂気に変わる。一方で自分が愛されていることを知ったら救えたかもしれない命。どこまでも悲劇的な運命がアナの孤独を象徴していた。ただ、結末にもうひと工夫ほしかったが。。。
オススメ度 ★★*