こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

愛してる、愛してない

otello2013-03-19

愛してる、愛してない

監督 イ・ユンギ
出演 ヒョンビン/イム・スジュン
ナンバー 295
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

浮気した私のせいなのに、どうして怒らないの? 出ていくと決めたのに、なぜ優しくするの? 女は目でそう問うが、男はあいまいな態度を崩さない。外は篠突く雨、引越しの準備をする妻と手伝う夫。一緒に過ごす最後の日、思い出を懐かしむわけでもなく、恨み事を言うわけでもない。気まずい空気が流れないように気遣う夫に、妻はかえって居心地の悪い思いをするばかり。カメラは、妻が不倫に走った挙句夫を残して家を去る、まさにその日の出来事を追う。クローズアップを多用した映像はふたりのわずかな内面の変化も逃さず、妻の揺れ動く心と夫の煮え切らない性格を丁寧に掬い取る。

妻を空港に送る途中離婚を切り出された夫は引きとめる勇気がない。数日後、夫は荷造りを始めた妻のために大切にしていたカップを梱包したり、ディナーを予約したり、コーヒーを入れたりと、彼女の邪魔をしないようにする。

引き戸が動かず雨が入り、床を拭こうとする妻。彼女に、うまく閉めるコツを披露する夫。あと数時間しか家にいない彼女に、これからも必要なことのように丁寧に教える。このままいつもどおりに過ごしていれば彼女も別れる予定を先延ばしして、もしかしたらそのまま忘れてくれるかもしれないといった切ない願いが、彼の行為からにじみ出ている。未練たらたらなのに口には出さない。代わりにこの期に及んでどれほど彼女を愛しているかをさりげなく伝える。きっと彼女を口説いた男は強引だったのだろう。夫の踏ん切りの悪さ、それは相手を慮る気持ちの裏返し、だが傷つけたくないと思っても、結局どちらかが傷ついてしまう。そんな微妙なバランスの上でかろうじて保たれる繊細な感情の揺らぎがリアルに再現される。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ただ、長まわしのショットの連続は物語から起伏を奪い、単調な語り口は退屈を禁じえない。30分くらいの短編で描き切れる内容だった。。。

オススメ度 ★★

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