こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ひまわりと子犬の7日間

otello2013-03-22

ひまわりと子犬の7日間

監督 平松恵美子
出演 堺雅人/中谷美紀/でんでん/若林正恭/吉行和子/夏八木勲/小林稔
ナンバー 67
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

父が己の仕事内容を子供に教える瞬間、もちろん憧れの職業ならば誇らしく話すに違いない。だが、犬の殺処分だった場合、多感な年ごろの娘にどう説明すべきか。「自分もつらい」「誰かがやらなければならない」「でも何とか助けてやろうとしている」などと言葉を尽くしても彼女を納得させることはできない。そんな父親の苦悩と娘の反発がリアルに再現される。物語は、飼い主の都合で飼えなくなった犬たちが処分の日までを過ごす管理センターの職員が、出産直後の母子犬のために里親を見つけようと奔走する姿を描く。人間に憎悪を抱いていた母犬が主人公には心を開いていく過程が切ない。

保健所職員の彰司は必死でわが子を守ろうとする母犬を保護、子犬が乳離れするまではと7日間の収容期限を21日に伸ばしセンターで面倒を見る。彰司は母犬の警戒心を解くために泊まり込みで世話を始めるが、懇意の獣医がブログにアップしてしまう。

引き取り手が現れなかった犬たちは、“ガス室”に送られる。彰司は最期のエサに好物のソーセージを与え、慰霊碑に手を合わせ冥福を祈る。動物とはいえ生き物を食料以外の目的で殺す。身勝手な人間に見捨てられた犬もいる。それらの事情にいちいち胸を痛めていては業務に支障をきたすのは分かっていても、せめて犬に安らかな気持ちで逝ってほしいと願う彰司。その優しさを堺雅人が憂いを含んだ瞳で哀しげに演じている。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

しかし、最後に彰司が取った行動はいかがなものか。主な観客層である子供への配慮なのはわかるが、すでに収容期限を勝手に延長しているのだ、彰司にはやはり決まりは守らせるべきだ。そして個人の努力だけでは救えない命があるからこそ、命の尊さが伝わるはず。実際に犬の殺処分に携わっている人たちは彼の自己満足的な行為に「我々の思いを代弁してくれた」と思うだろうか。キレイ事で済ますよりも、死という現実にきちんと向き合ってほしかった。。。

オススメ度 ★★

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