こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

アンナ・カレーニナ

otello2013-03-29

アンナ・カレーニナ ANNA KARENINA

監督 ジョー・ライト
出演 キーラ・ナイトレイ/ジュード・ロウ/アーロン・テイラー=ジョンソン/ケリー・マクドナルド/アリシア・ヴィキャンデル/ドーナル・グリーソン
ナンバー 59
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

運命の邂逅、そして燃え盛る恋の炎。貞淑だった人妻はいつしか心のおもむくまま家族を捨て、若く凛々しい士官の元に走る。体裁を気にする夫の寛大な申し出にも背を向ける彼女はすべてを失っていく。映画は、帝政ロシア末期、高級官僚の妻として優雅な暮らしを享受していたヒロインが初めて自分の決意を貫こうとするトルストイの世界を、“劇場”という狭い空間に凝縮し、物語そのものが劇中劇のような効果をもたらした上で人生とは舞台で演じられる芝居であると解釈する。様式と形式が入り混じり、虚構の中にこそリアルが存在すると言いたげな構成で、登場人物の繊細な感情は共感を呼ぶ。

兄の浮気の仲裁にモスクワを訪れたアンナは若き将校・ブロンスキーと出会う。ブロンスキーの執拗なアプローチにアンナの気持ちは揺れ、彼の愛を受け入れてしまう。だが、ふたりの噂は瞬く間に社交界に広がり、夫の耳にも入ってしまう。

一方でアンナの兄の義妹・キティと地主・リョーヴィンの変化も並行して描かれる。リョーヴィンは革命家の兄が娼婦を妻にしていることに驚きを隠せずにいたが、やがて領地の農奴と友情をかわすまでに成長する。何でも「神の意志」と言う年老いた農奴に対し「お前の祖父が買われてきたのも神の意志か」とリョーヴィンは問う。農村では封建制度がほころびを見せ始め、都市では貴族社会に亀裂が入る。自由に考え行動するのが当たり前ではなかった時代のアンナの行為が、新しい価値観への布石になったと考えるべきなのだろうか。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ところが、この作品は原作のハイライトをなぞってはいるが、エピソードの羅列に終わってしまっているのが残念。もちろん映像化するにあたってきらびやかでゴージャスな衣装や舞踏会での睦みあうようなダンス、競馬シーンに至るまで視覚的なユニークさを追求してはいる。にもかかわらずそれらが有機的に結びついているとは思えず、映画の魅力に昇華しきれていなかった。。。

オススメ度 ★★

↓公式サイト↓