こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮

otello2013-04-04

ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮 A ROYAL AFFAIR

監督 ニコライ・アーセル
出演 マッツ・ミケルセン/アリシア・ヴィキャンデル/ミケル・ボー・フォルスガール
ナンバー 74
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

近隣諸国では「人間が人間らしく生きる権利」を国が保障する動きが広まっているのに、国内は封建貴族が既得権を手放そうとはしない。小国ゆえ贅を極めた宮廷生活を送っているわけではないが、それでも財政は逼迫している。いまだ中世の名残が強い18世紀後半のデンマーク、物語は啓蒙思想を根付かせようとした一人のドイツ人医師の革新と挫折を追う。外国人がいかにして最高権力者にまで上り詰めたか、なぜ守旧派の罠に落ちたのか、いち早く近代化を成し遂げた英国出身の王妃の目を通して描かれる。端正で落ち着いた映像が史実に秘められた謎を紐解いていく展開はミステリアスな装いで、禁じられた愛の行方を暗示する。

英王室からデンマーク王・クリスチャンの元に嫁いだカロリーネ。だが、夫の奇異で無礼な振る舞いに耐えきれず王子を出産後絶縁状態になる。その後、外遊したクリスチャンは啓蒙思想家のヨハンを侍医として連れ帰り、カロリーネはヨハンの理想に共鳴する。

帰国後も放蕩を続けていたクリスチャンだったが、カロリーネの提案の元、ヨハンが巧みにクリスチャンを操り、国民に天然痘の予防接種実施を決定する。これまで枢密院のお飾りでしかなかったクリスチャンが、ヨハンという助言者を得て、国民に自由を与え福祉を施す法案を次々と成立させていく過程は小気味よく、いつしかカロリーネとも言葉を交わすようになっている。権限を委任されたヨハンは次々と反対勢力を追放し、改革を実現しようとする。その姿はあくまでも思慮深く、決しておごることはない。よほどできた人間だったのだろう。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

一方で深く愛し合う仲となったカロリーネとヨハンだが、カロリーネ妊娠の情報が漏れ大スキャンダルとなる。新聞に悪口を書かれたヨハンが一度市民に与えた表現の自由を取り上げ検閲を再開すると言い出す場面に、やっと彼の人間らしい一面を見た気がした。不倫するときはにきちんと避妊する、それを怠った詰めの甘さが彼らを破滅に追い込んだ原因。歴史は閨房から生まれるのもまた真実なのだ。

オススメ度 ★★★

↓公式サイト↓