こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

世界が食べられなくなる日

otello2013-04-16

世界が食べられなくなる日 Tous cobayes?

監督 ジャン=ポール・ジョー
出演
ナンバー 87
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

腹部やのどのあたりで大きく膨らんだ腫瘍。GM(遺伝子組み換え)作物を原料にした餌のみで生育されたラットは、平均寿命の2年を経たとき、多くの個体が痛々しい姿を見せる。原因は明白、しかしGM作物を開発・販売する大手企業は、3か月間のラットの実験結果だけで発売にこぎつける。悪影響の可能性があるのに、収益確保のためには都合の悪いデータは伏せ、さらに政府の役人まで抱え込んで安全性を偽装する。もはや犯罪行為であるのに、国策として組み込まれてしまった。映画は無関心でいると知らぬ間に人体をも汚染しかねないGM技術の広がりに警鐘を鳴らす。

第二次大戦後、核開発に費やされた技術をゲノム解析に応用し、科学者たちは遺伝子レベルで害虫への耐性を持たせた農作物を完成させる。だが、GM作物の危険性は未知数で、企業が公表した資料は疑問だらけ。フランスの農民や活動家たちはGM作物に異議を唱える。

ほとんどは大豆かトウモロコシであるGM作物。さすがに風当たりが強いのか、直接人の口に入る形では見向きもされなくなった。ところが、表示義務がない家畜の飼料に転用され、いつしか人間はその肉や乳や卵を口にしている現実。ラットの実験同様、発がん性物質はすぐには表出しない、10年、20年体内に蓄積されてやっと顕在化する。GM作物を間接的にでも摂取し続けるのは、安い食料を手に入れる代わりにしてはあまりにも高リスクなのだ。有機農法で育てられたブタたちが生き生きと走り回る姿が、食の安全にかかるコストは次世代のために受け入れなければならないことを象徴していた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

一方で、フランス国内での原発事故、福島の警戒地域、反原発運動などを取材し、目の前にある危機を告発する。放射線による壊滅的被害、それは近い将来GM作物が人類に災厄をもたらす予兆。GM原発、強引な二題噺の感は否めないが、政治家・役人・大企業の嘘を見破れなかったツケを決して我々の子孫に残してはいけないという警告はしっかりと受けとれた。。

オススメ度 ★★*

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