こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ガレキとラジオ

otello2013-04-19

ガレキとラジオ

監督 塚原一成/梅村太郎
出演
ナンバー 92
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

家も財産も身近な人も流された。生き残った者の悲しみは測りきれない。それでも日々の暮らしを続けるためにはいつまでも絶望しているわけにはいかない。そんな人々に最新の災害情報を流すローカルFMラジオ局。映画は、全くの素人が試行錯誤を繰り返すうちに、被災者の希望を担うまでに成長する姿を追う。仮設住宅住まいのスタッフもいる、失敗続きに落ち込むスタッフもいる、生活費に困って失踪するスタッフもいる。満足な機材もなく、有名女優の電話出演には受話口にマイクを近づけて声を拾っていた彼らが大イベントを実行するまでの過程は、生き、働く意義を考えさせる。

大震災から2カ月、津波の被害も生々しい南三陸町に、翌年3月までの期間限定の災害ラジオ局「FMみなさん」が開設される。取材記者が町中を回って集め、町民施設の廊下の奥に仕切られたスペースから発せられる街ネタは、地域をつなげる支えになっていく。

時給をもらっている以上町役場のビジネスとして請け負っているのだろう。仕事が欲しかった人、能力を生かしたかった人、経験を積みたい人、動機は様々だが、みな一役買いたいと願っている。おそらく開局当初は住民に直接関係する身元不明人情報や日常生活にかかわる実用情報が主体だったはず。だが、ある程度落ち着きを取り戻すと、もっとリスナーを楽しませなければ聞いてもらえない。彼らはクリスマスツリーの点灯イベントなど、影響力のある電波メディアに携わる者がやるべきことを模索していく。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

年が明け、震災で結婚式を挙げられなかったカップルの記念写真を撮るイベントを企画した彼らは準備に奔走する。立ち止まっていては何も変わらない、被災者が自分の足で歩き始めてこそ本当の復興なのだ。彼らの活躍の一方でサチコさんという娘と孫娘を同時に亡くした年配の女性にカメラを向けるが、彼女の時は止まったまま。まだまだ立ち直るのに時間が必要な人もいる現実にも目を配るバランス感覚に好感が持てた。。。

オススメ度 ★★★

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