こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

図書館戦争

otello2013-04-29

図書館戦争

監督 佐藤信
出演 岡田准一/榮倉奈々/田中圭/福士蒼汰/西田尚美/橋本じゅん/栗山千明/石坂浩二
ナンバー 101
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

悪書に指定された本が書店の棚から次々と抜き取られ、没収されていく。国民に悪影響を与えかねないコンテンツは検閲され、表現の自由、出版の自由が失われてしまったパラレルワールド、本当に恐ろしいのは一般市民の無関心なのだ。“お上”の言いなりになるのに疑問を持たず飼いならされてしまった人々は、いくら警鐘を鳴らしても、暮らしに特に不満や不便がない以上、あえて抗議活動を起こしたりはしない。映画はそんな社会で、命がけで図書館の自由を守ろうとするヒロインの活躍を描く。軍隊並みのハードなトレーニングに歯をくいしばって耐える彼女の理想と若さゆえの向こう見ずな姿は、人間らしく生きる大切さを教えてくれる。

良化隊によって検閲が日常化した近未来、図書館の本だけは図書隊によって独立が保たれていた。かつて助けてくれた図書隊員に憧れて隊員となった笠原は、堂上教官によって日々厳しく鍛えられ、希望通り特殊部隊に配属される。ある日、禁書引き渡しを求めて武装した良化隊が攻撃してくる。

言論の自由を奪い、国民を“寝たまま”にする。為政者にとってこれほど都合の良い状態はないだろう。この世界では図書館は最後に残された自由の砦、人間の正義と良心が数百年の時間と数百万の命を費やして手に入れた民主主義の象徴でもある。今やテロ防止の名目で通信の秘密が侵され始め、街角の監視カメラは市民生活を丸裸にする。そしてそれらを安全と引き換えに支持する市民がいる。気が付けば警察国家になっている、そうならないように危機感を常に持ち続けろと、この作品は図書館と図書隊の奮闘を通じて訴える。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

図書隊は課せられた専守防衛のルールによって、良化隊から激しい銃撃を受けても決して殺傷目的の応戦ができず、威嚇射撃のみが許されている。敵を傷つけてはいけない戦争、その矛盾を抱えた銃撃戦は派手になるほどどこか空疎だ。ならば自動小銃を使った壮絶な地上戦をリアルに再現するよりも、もっと罠や仕掛けに驚嘆のアイデアを出して、血を流さないで勝つ戦術を考えてほしかった。

オススメ度 ★★*

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