こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

モンスター

otello2013-05-07

モンスター

監督 大九明子
出演 高岡早紀/加藤雅也/村上淳/大杉漣
ナンバー 108
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

心細くならないように背中をさすってもらった、それは一度だけ味わった男の優しさ。じろじろ見てはいけないとわかっていながらもつい視線が釘付けになる、周囲の人間にそう思わせるほどの醜い顔をした女は、彼が記憶の奥にとどめておいてくれたことを支えにして苦難の人生を克服していく。映画はその容貌ゆえに親からも愛されず友達もできなかったヒロインが、整形手術で絶世の美女に生まれ変わる姿を追う。“人は見かけより中身”などという慰めが一切通用しない価値観の中で、ひとり世間の冷たい目に耐えて生きてきた彼女の哀しみと憎しみが復讐の炎となって燃え盛る過程は、凄まじいまでの女の情念を描き切っていた。

田舎町にレストランをオープンした美貌のオーナー・未帆は初恋の人・英介の来店を待ち続けている。高校時代、和子と呼ばれていた彼女はブルドッグとあだ名される醜女で、英介に劇薬を飲まそうとして街を追い出された過去があった。

もちろん少女時代は壮絶ないじめを受けてきたに違いない。だが、顕在化するのはむしろ短大を卒業して印刷工場で働き始めてから。同僚の暴行に耐えつつも目・鼻・口と次々にメスを入れ変貌していく和子は、手術代捻出に風俗で働くのも厭わず、ひたすら美しくなるために生きようとする。やがて蹴っていた女をボコボコにするが、それは初めて彼女が感情を爆発させた瞬間。ブスだからといって卑屈になる必要はない、そしてバカにされないためには怒りは時に有効であると彼女は学んでいく。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

未帆と名も変えた彼女は、店にやってきた英介をたやすく籠絡して、“灯台の思い出”を聞き出す。真実を知っても、英介は自分を愛してくれるのか。執拗に答えを引き出しても寂しさは埋められない。偽らなければ生きられない、偽って生きるのは虚しい、結局彼女に残ったのは孤独。それでも、女の幸せを手の届くところにまで引き寄せられて満足しているのではないだろうか。。。

オススメ度 ★★*

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