こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

死霊のはらわた

otello2013-05-08

死霊のはらわた EVIL DEAD

監督 フェデ・アルヴァレズ
出演 ジェーン・レヴィ/シャイロー・フェルナンデス/ ジェシカ・ルーカス/エリザベス・ブラックモア/ルー・テイラー・プッチ
ナンバー 109
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

呪いに感染した腕を調理用のこぎりで切断し、クルマの下敷きになった手を力任せに引きちぎる。迫りくる死と対峙し、生き残るために体の一部を自分の意志で捨てる。苦痛に耐えるのはいずれも女。一方で心に隙があり、悪魔の餌食になりやすいのも女。映画は、両極端にある女の強さと弱さを描き、ホラーにおける男女の役割分担のセオリーを覆そうとする。犠牲になりそうな人物が助けられ、キーパーソンが襲われる。孤立した山小屋で得体の知れない魔物に憑りつかれた5人の若者が血塗れの一夜を過ごす古典のリメイク、ただ彼らの恐怖を再現する方法はあくまでオーソドックスだ。

山奥のキャビンに集まったミア、デビッド、エリック、オリビア、ナタリー。エリックが地下室で「死者の書」を見つけ、警告を無視して呪文を唱えてしまったため悪魔を呼び覚ましてしまう。悪魔は火あぶりにされた少女の姿を借り、ミアに憑依する。

傷ついた少女が脅えと絶望を目に湛えながら逃げ回ったり、エリックが目覚めさせた悪魔がキャビンに向かって飛ぶシーンは、鬱蒼と木が生い茂る林の中をその主観=カメラが高速で移動する。悪魔の感覚を見る者の脳裏に注入する映像はこの作品でも繰り返され、おどろおどろしさの中にもスタイルを感じさせる。また、カルト教団風の集団の儀式のいけにえになる少女が、実は悪意に満ちた存在だったというプロローグも秀逸。そして、“キャリー”のように突然地面から伸びた手に手首をつかまれたり、地下から這い出してくる女は“貞子”のようにカクカクした動きを見せる。思わず笑ってしまった。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

小道具はネイルガンやチェーンソー、くぎ抜き、カッターナイフ、ナタ、散弾銃などの定番で使い方も新鮮味はない。そのあたり、現代的なテクノロジーに頼らずになんとかキャビンの中にある物だけで戦うあたりは、人間最後は己の知恵と肉体が頼りだと強調したかったのだろうか。

オススメ度 ★★*

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