こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

聖☆おにいさん

otello2013-05-13

聖☆おにいさん

監督 高雄統子
出演 森山未來/星野源
ナンバー 113
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

仏や神ゆえに21世紀の日本人の常識とは少しずれている感覚から発せられる、ゆる〜いギャグやダジャレに小腹をくすぐられた。その、現代によみがえったTシャツとジーンズといういでたちのブッダとイエス、彼らが起こす珍騒動の数々は、日本人と日本文化の再発見となっている。ただ、コミックはセリフやシチュエーションの元ネタの意味をじっくりと反芻できるが、それをアニメにしただけでは一発芸の羅列を見せられているよう。15分程度の深夜TVだとこの弛緩した空気も脱力系と評価されるかもしれないが、90分の劇場版映画ならオリジナルストーリーにするくらいの気概が欲しかった。

世紀末も無事終えバカンスのために下界に降りてきたイエスとブッダ。素性を隠して立川のアパートに入居するが、近所からは毎日ぶらぶらしている怪しい外国人と思われている。ある日、2人で遊園地に遊びに行くが絶叫マシンで意見が合わなくなる。

他にも、スーパーでの買い物、銭湯やプールで味わう至福とカルチャーショック、夏祭りやクリスマスといったの近郊都市の四季の移ろいを彼らは肌で感じていく。もちろん“人間”として過ごしているので多少は感情的な衝突もあるが、そこはやはり“聖”なるもの、事を荒立てず相手の立場を慮りながら解決策を探ろうとする。拗ねたり小言は口にするが決して怒ったりはしない。争いごとを極力避けようとする姿は草食系男子の典型だ。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

だが、それらの物語における情報の密度があまりにも低く、冗長な展開は苦行に等しい。特に前半のクライマックスともいえる、ブッダの額の黒子を執拗に狙う悪ガキのエピソードは、まったく共感できず意味不明。どんな仕打ちを受けても許す心が大切と言いたかったのだろうか。また、特売でティッシュ1箱98円は高すぎないか。インドアプールにスイミングキャップなしで入るのはマナー違反ではないか。などなど、つい突っ込んでしまうところも多く、この作品の世界観に途中から疎外されてしまった。

オススメ度 ★*

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