こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

きっと、うまくいく

otello2013-05-21

きっと、うまくいく 3 IDIOTS

監督 ラジクマール・ヒラニ
出演 アーミル・カーン/カリーナー・カプール/マドハヴァン/シャルマン・ジョシ
ナンバー 120
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

人生とは己の意志で選ぶもの、大学はその手助けをすべきであって、型にはまった優良学生を大量生産する場所ではない。映画は、行方不明になった親友の足跡をたどる旅を通じて、権威を嫌い自由を愛した彼と交わした青春と友情の物語に昇華されていく。楽しく刺激的で痛快、時にほろ苦い悲しみや未来への不安もあった思い出の数々は、大人になっても決して色褪せない。そしてあのころがあるから今がある。そんな、過去を懐かしみつつも現在を生きる男たちのノスタルジーは甘酸っぱい共感を呼ぶ。何より感情を音楽とダンスで表現するインド映画らしいサービス精神に3時間近い上映時間もあっという間に過ぎた。

ファルハーンとラジューは大学で同級だったチャトゥルに呼び出され、卒業後消息を絶ったランチョーに会いに行く。学生時代、ランチョーは天才的頭脳と飾らない人柄で、いつもファルハーンとラジューの支えになっていた。

彼らが学ぶのはインドでもトップの工科大、競争社会でのサバイバル術しか教えようとしない学長にランチョーはひとり異議を唱える。答えのある難問より答えがない問題に挑むほうが、ずっと思考力・発想力が身に付くと。頭の固い学長に対し彼らのイタズラはエスカレートし、やがて目の敵にされる。学長の教えを忠実に守ったチャトゥルは絵に描いたようなやり手ビジネスマンになっているが、“成功”に振り回される卑しさを隠せない。一方でランチョーに感化されたファルハーンとラジューの瞳は輝いている。悠久のインドでも教育や格差、拝金主義といった社会問題が顕在化していることを印象付ける。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

その後ランチョーの素性が明らかになるが、それはファルハーンたちが知っている金持ちの子息といったものとは全く違う庶民的な姿。自分の才能を信じ、自分で決めた道を自分の足で歩いていく。つらいとき苦しいときは「うま〜くいく」と口にして心を落ち着かせる。そうすればきっと成功は後からついてくる、ランチョーの超然とした生き方が羨ましかった。

オススメ度 ★★★*

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