俺俺
監督 三木 聡
出演 亀梨和也/内田有紀/加瀬 亮/キムラ緑子/高橋惠子
ナンバー 126
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています
俺以外にも俺がいる! 趣味や性格は違うけれど顔や考え方や食べ物の好みは同じ、癖まで共通している。彼らはいったい誰なのか? やっぱり俺なのか? それとも他人なのか? そんな主人公の周辺でコピーが増殖し、オリジナルであるはずの「俺」の身に危険が及び壮絶なサバイバルが繰り広げられる。コピーであっても彼(彼女)にとっては我こそがオリジナル、「劣化」などと決めつけられて「削除」されてはたまらない。映画は30人以上の「俺」を亀梨和也に演じさせ、今やSFとは言えないほど身近に迫ったクローン化技術の暗部を戯画化する。
冴えない販売員・均は、偶然手に入れた携帯電話で持ち主の母と話すうちにオレオレ詐欺を働いてしまう。それを機に自分と同じ顔をした大樹・ナオと知り合い意気投合、3人の「俺」はナオのアパートでつるむようになる。
言葉にしなくても分かり合える人間関係は変に気を遣わなくて済み、妙に居心地がいい。このあたり、コミュニケーション能力が過剰に求められる昨今の風潮がいかに人づきあいの苦手な者にプレッシャーを与えているかを逆説的にあぶりだす。ところが、ナオが更に別の「俺」を連れてきたせいで、ユートピアは崩れていく。彼らはもはや「俺」とは呼べないクオリティ、同質のものが集まっても、ある程度の数になると同質の中から異質を排除し序列をつけようとする人間の本性が哀しい。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
やがてナオが殺され、均も大勢の「俺」に命を狙われる。大樹とも決着をつけなければならない。一方でいつの間にか周囲の人々も均の外見に変化し、大量発生した「俺」同士の「削除」が激化する。ちりばめられたさまざまなメタファーは理解不能のものも多いが、そもそもが不条理劇、意味を考えるよりも状況を楽しみ展開を不気味に感じることが大切なのだろう。なんか「リング」の貞子のなれの果てをイメージしてしまった。ダビングを繰り返えされ劣化し、人を呪うよりも仲間割れするという。。。
オススメ度 ★★*