こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

イノセント・ガーデン

otello2013-06-03

イノセント・ガーデン STOKER

監督 パク・チャヌク
出演 ミア・ワシコウスカ/マシュー・グード/ニコール・キッドマン
ナンバー 132
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

彼女の鋭敏な感覚は人の心の声を聴き、腹の底を見透かす。それゆえ他人との距離が縮まらず孤立してしまう。物語は、唯一の理解者だった父を亡くし、代わりに現れた叔父に強烈な違和感を抱くヒロインが体験する恐怖と覚醒を描く。家政婦、叔母、クラスメート、次々と近しい人々が姿を消すなか、いつしか彼女自身が忌まわしい本能を自覚していく過程は奇妙な緊迫感にあふれ、思わせぶりなカットの連続は息詰まるようなサスペンス、そしてセリフの端々にちりばめられたメッセージが伏線となる驚愕のクライマックスになだれ込む展開は、洗練されたミステリーに昇華されている。

最愛の父の死にショックを受けたインディアは、葬儀に出席した初対面の叔父・チャーリーを警戒し、彼とすぐに打ち解けた母に嫌悪感を覚える。そんな時、チャーリーの素性を詳しく知るジン叔母が訪ねてくるが、母は彼女を追い返してしまう。

チャーリーはなぜ長期間家を空けていたのか。なぜ突然戻り、彼を知る人々は戸惑いを隠せないのか。母はすっかりチャーリーを信頼しているが、インディアの直感は警報を鳴らしている。危険が迫っているのが分かっていながら手をこまねいているしかないインディア。しかし苛立ちつつもどこかチャーリーに共鳴している自分に気づき、なおかつそれを認めたくないインディアの複雑な気持ちを、ミア・ワシコウスカが不機嫌な表情と不安定な視線で演じ分ける。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

人気のない森で同級生に襲われているところをチャーリーに助けられたインディアは、そのとき殺しの快感に目覚める。それはかつて父に教えてもらった猟銃で小動物を仕留めるのとは違う、遙かに突き抜けた甘美な誘惑に身を浸す解放感。チャーリーから受け継いだ殺人の能力がインディアの中で爆発する瞬間は、血と死の美学に満ち、彼女の呪われた未来を予感させる。途轍もない狂気を孕んだ耽美な時間の流れが五感を刺激する作品だった。

オススメ度 ★★★

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