こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

リアル〜完全なる首長竜の日〜

otello2013-06-05

リアル〜完全なる首長竜の日〜

監督 黒沢清
出演 佐藤健/綾瀬はるか/中谷美紀/オダギリジョー/染谷将太/堀部圭亮/松重豊/小泉今日子
ナンバー 135
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

夢を見ている間は、夢の中の出来事こそが現実。眠り続けている患者にとって、脳が知覚するビジョンは実際に起きている客観的事実のように感じられるのだろう。そして、その感覚を他人と共有することができたなら、彼らはいったいどういう体験するのか。物語は恋人の意識に入り込んだ男が、彼女から真意を聞き出せない上に難問を突き付けられ、答えを求めて旅する姿を描く。機械的な電気信号と脳内の記憶で構築された仮想現実は本人の意思と感情を敏感に反映し、願望や不安、恐怖や狂気も具体化してしまう。映画はその世界観を硬質な映像で表現する。

自殺未遂で昏睡状態のままの淳美の意識の中に、センシングと呼ばれる最新医療で自らの意識を送り込んだ浩市は、自殺の原因を聞き出そうとする。だが彼女は「首長竜の絵を探してきて」と言うのみ。センシングから覚めた浩市は不気味な少年の幻覚を見始める。

漫画家だった淳美の作品は死のイメージが濃厚に付きまとうものばかり。それは忌まわしい秘密と後悔と苦悩の産物でもある。センシングの中でも淳美はペンを手離さず創作に没頭し、浩市はもはや彼女の邪魔でしかない。愛し合っているのに心が離れていく、止めるには首長竜に込められたメッセージを解読するしかない。浩市は淳美と知り合った少年時代に住んでいた島に出向き、淳美の過去と己の過去をたどり、失われた記憶を取り戻そうとする。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ただ、浩市が最初のセンシングから目覚めた後すぐに幻覚に襲われるあたりで、この後の展開が読めてしまった。主人公が妄想の中にいる設定は、どんでん返しというには手垢が付いている。また、モリオに対する贖罪も、彼の名のアナグラムをタイトルにした漫画である程度はなしているとはいえ、首長竜にペンダントを与えただけではすまないだろう、所詮センシングの中の出来事なのだから。むろんモリオの亡霊は浩市の頭の中にしか存在しないから、浩市の気が済めばそこで終わりではあるのだが。。。

オススメ度 ★★

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