こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

サウンド・オブ・ノイズ

otello2013-06-06

サウンド・オブ・ノイズ Sound of Noise

監督 ヨハネス・スターン・ニルソン/オーラ・シモンソン
出演 ベント・ニルソン/サナ・ペルソン/マグヌス・ボリエソン/ヨハネス・ビョーク/フレドリク・ミアレ/マーカス・ハラルドソン・ボリー
ナンバー 133
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

クラシックであれポピュラーであれ、何の主張もないない音楽ばかりが街にあふれている。それは音楽によって人々を無害な“家畜”に洗脳する支配階級の陰謀ではないのか。弛緩した日々に慣れきった大人たち、抵抗すら忘れた若者たち、男も女も怠惰な平和こそが人生と諦めている。映画はそんな日常に反旗を翻したテロリストたちの知的でユーモラスな戦いを描く。彼らの武器はリズムとサウンド、既成の楽器ではなく、“その場所”にある音の出るモノを使う。規則正しく刻まれる音は単独ではノイズに過ぎないが、様々な波長がシンクロするうちにノリノリの音楽に編みあがる。それらは聞く者の心の中で豊かなメロディとして消化され、鮮やかで心地よい体験に昇華されていく。

従来の音楽に飽き足らないサナとマグナスははみ出し者のドラマーたちを集め、音楽によるテロを計画する。手始めに病院の手術機器の電子音と患者の体を楽器に見立て独創的な演奏を敢行、さらに予告通り銀行での犯行に及ぶ。

この事件を捜査するのは両親も弟も有名な音楽家だが、自身は音楽アレルギーの刑事・アマデウスメトロノームが刻む規則音には耐えられるが旋律を伴うと耳から出血するほど症状は重い。しかし彼はテロリストたちの音楽に込められた自由な魂の叫びに共鳴し、ルールに縛られた音楽からの解放に同調していく。テロリストたちはおそらく40歳を優に超えているオッサン・オバハン、それでも常識を打ち破ろうとするアーティスト精神はいまだ衰えていない。そして彼らに感化され劣等感を克服するアマデウス。気持ちの持ち方で人間の可能性はいくらでも広がることをこの作品は教えてくれる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがて音楽テロの真意を知ったアマデウスは、自らも作曲に挑戦、彼らの最後のプランに一枚かもうとする。町全体を演奏会場に見立てた壮大なコンサート、あくまで社会に対する不満を暴力に頼らず意思表示する彼らの姿には、束縛されずに生きる素晴らしさが充満していた。

オススメ度 ★★★★

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