こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

二流小説家 シリアリスト

otello2013-06-13

二流小説家 シリアリスト

監督 猪崎宣昭
出演 上川隆也/片瀬那奈/小池里奈/高橋惠子/戸田恵子/本田博太郎/伊武雅刀/武田真治
ナンバー 122
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

真っ赤な花弁が散らされた首のない女の裸体。それは死と血がもたらす至高のアートだ。物語は女性を拉致殺害した上、頭部を切断した遺体に装飾を施して写真を撮る“シリアル・フォト・キラー”と呼ばれる男が、売れない作家に接近したことから起きる新たな連続殺人の真相を追う。目を見ただけで相手の本質を見抜き、言葉だけで自在に操る、そんな特殊能力を持つ犯罪者を武田真治が怪演、人並み外れた知能指数を異常なテンションに昇華させていく。対照的に才能にも運にも恵まれない主人公のうだつの上がらない日常がリアルだ。

貧乏小説家の一兵のもとに連続女性殺人事件で死刑判決を受けた呉井から告白本の執筆を依頼する手紙が届く。一兵は悩んだ末引き受けるが、呉井は自分の“信者”3人に会って彼女たちとの交情を官能小説にするという条件出す。

信者たちは皆心に傷を持ち、呉井の犯行に共感を示している。彼女たちの歪んだ思いを一兵は掬い取ろうとするが、彼の理解をはるかに超えている。反社会的な考えを支持して世間や常識に異を唱えるといったポーズとしての反抗ではなく、呉井と同じレベルまで精神が病んでいるのだ。共通するのは己に自信も価値も見いだせず生きる目的を持てない寂しさ。彼女たちの圧倒的な孤独が“現代”の病巣を象徴していた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ところが信者たちは呉井と同じ手口で殺される。怪しげな被害者遺族、風変わりな女弁護士、執念深い刑事などが暗躍するなか、粘り強く取材を続けていく一兵。謎を解決するとまた別の謎が浮上するミステリーの王道を進む展開は、少し気を許すとついていけなくなるほどスピーディで複雑怪奇だ。そして消し去ったはずの呪われた過去がよみがえり、一兵に襲い掛かってくる構成はどんでん返しの連続。真実はどこにあるのか、最後まで息がつまりそうだった。ただ、あまりにも短い準備期間であれほど手の込んだ殺人が一人の手で成し遂げられるあたりに不自然さを感じたが。。。

オススメ度 ★★*

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