こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

スター・トレック イントゥ・ダークネス

otello2013-06-15

スター・トレック イントゥ・ダークネス STAR TREK INTO DARKNESS

監督 J・J・エイブラムス
出演 クリス・パイン/ザカリー・クイント/ゾーイ・サルダナ/サイモン・ペッグ/ベネディクト・カンバーバッチ
ナンバー 144
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

直観に従い、正しいと思えばどれほど無謀でも行動に移す男。何事もロジカルに考え、決してエモーショナルに流されず合理的に対処する男。全く正反対の性格の2人はコインの表裏のごとくぴったりと寄り添いながらお互いの欠点を補いあっている。カーク船長とミスター・スポック、今回はそのキャラクターをより際立たせ、壊れかけた友情と信頼を修復するまでを描く。感情と論理、それは生まれつき持つ性質と、成長の過程で身につける理性。だが、最後の最後では本質的な部分が少しだけ勝るのではと思わせる。彼らはロボットではない、血の通った人間なのだから。

軍事情報記録保管庫が爆破され、対策を練るために軍高官が招集される。評議会はハリソンと呼ばれる男を犯人に特定するが、高官が椅子を並べる会議場がハリソンに襲撃される。カークはマーカス提督の命令を受け、クリンゴン支配地域の惑星に逃亡したハリソンを追跡する。

クリンゴン軍に囲まれたカークたちは絶体絶命の危機に陥るが、遺伝子操作で常人離れした強靭な肉体を手に入れたハリソンが現れ、クリンゴンの軍人たちを苦も無く倒す。このあたり、舞台となる未来社会では遺伝子操作で不老不死を追い求めるのではなく、人間らしく年老いて死ぬことを人類が選択しているようだ。そういえばプロローグの火山大噴火でも、他の文明には干渉しないと明確なルールにしているあたり、科学は進歩しても倫理観は健全であるとうかがわせる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがて、一度はカークたちに投降したハリソンは本性を露わにし、恐るべき牙をむく。宇宙空間で繰り広げられる戦場絵巻は3Dのスケール感で見る者を圧倒し、地上での肉弾戦はスピード感に手に汗握る。さらに小道具まで細密に再現された映像は臨場感にあふれ、過剰なほどの情報量が視覚を刺激する。しかし、先住民族に追われるカークや、クライマックスでハリソンを追走するスポックなど、走るという人間の根源的なアクションが一番躍動感を伴っていたのは確か。やはり俳優が身体能力を極限まで駆使してこそ映画はスリリングになる。

オススメ度 ★★★*

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