スタンリーのお弁当箱 STANLEY KA DABBA
監督 アモール・グプテ
出演 パルソー/デイヴィヤ・ダッタ/ラジェンドラナート・ズーチー
ナンバー 162
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています
顔にアザを作り、弁当も持ってこない少年。事情を学校では一切口にせず陽気な人気者を演じている彼に、クラスメイトたちは自分の弁当を快く差し出す。ここで描かれるのはいまだ満足に食べさせてもらえない子供がいるインドの現状。だが、その貧しさの中でも決して悲観的にならず、明るさを失わない主人公の瞳の輝きが印象的だ。そして、富める者が持たざる者に施すのは当然といった助け合いの精神が小学生ですでに完成している。なくすべき悪習と残すべき美徳が小学校という教育現場にさえ同居している、それが急速な経済発展を遂げるこの国の実態なのかもしれない。
作り話がうまいスタンリーはクラスの人気者だが、昼食時はいつも水を飲んで空腹を紛らわせている。ある日、級友のひとりから食べ物をもらおうとしてヴァルマー先生に見つかり、厳しく叱責される。
まだまだ外国人には理解できない文化習慣があるのだろう。しかし、“児童の弁当をたかる教師”は許されるのか? 時に他の教師の弁当を盗み食いし、児童たちがスタンリーに弁当を分け与えているのを見て彼らから惣菜を掠め取り、スタンリーを野良犬呼ばわりした上で登校不可を申し渡す。この教師を児童たちが手玉に取るシーンがコミカルに描写されるが、状況がシュールすぎて笑えなかった。彼のでっぷりと太った腹を見ると食費に困っているほど貧乏ではなさそう。なぜあそこまで堕ちたのか、理由が知りたくなった。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
もちろんスタンリーが親に愛されていないことは容易に想像がつく。それでも、友人や先生の前ではつらい素振りを見せず、コンサートに参加して見事なダンスを披露したりもする。ところが帰宅後の彼が身を置く現実は、虐待に等しい深夜にまで及ぶ劣悪な環境での重労働。そんな過酷な児童労働を最後になって見せる構成のうまさに、中盤までのこの作品に対する違和感はすべて吹き飛んでしまった。。。
オススメ度 ★★*