こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

囚われ人

otello2013-07-10

囚われ人 CAPTIVE

監督 ブリランテ・メンドーサ
出演 イザベル・ユペール/ジョエル・トーレ/マリア・イザベル・ロペス/メルセデス・カブロル
ナンバー 168
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

突然の銃声、乱入する武装集団。平和なはずの観光地に悲鳴がとどろき、客たちはなすすべもなくボートに押し込められる。人質になった彼らはジャングルの島に移動させられたのちも道なき道を歩き続け、テロリストと政府の交渉結果を待つばかり。ところが時が流れるにつれ、テロリストと人質の間に運命共同体的な思いが生まれ始める。カメラはフィリピンの小島で起きた人質事件に寄り添い、不安と憎悪がやがて小さな優しさに変わっていく過程を追う。たとえ相手がテロリストでも正面から向き合っているうちに恐怖や怒りはいつしか弱まり、理解が芽生える。そんな人間の感情がリアルに再現される。テロリストたちもまた常に政府軍の奇襲に脅えているのだ。

フィリピン南部のリゾート地でイスラム系テロ組織による拉致・人質事件が発生。テロリストは人質を連れ深い熱帯雨林に覆われた山岳地帯を転々とし、身代金が支払われた人質から解放していくが、一方で命を落とす者も少なくない。

病院や学校など行く先々でテロリストは公共施設に立ち寄って補給し休養をとるが、報復を恐れているのか住民は誰も通報しない。むしろ礼儀正しいテロリストたちに敵意より敬意を抱いているかのよう。さらに人質の中にはゲリラと結婚する娘まで出る始末。おそらくこの地の権力は腐敗しきっているのだろう、テロリストたちが深く地域に溶け込んでいることに驚きを禁じ得ない。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

映画はフランス人ソーシャルワーカー・テレーズの目を通じて描かれるが、彼女の主観よりも客観的なリアリズムに重きを置くためにドキュメンタリー風の仕上がりになっている。ゆえに盛り上がりに欠けるが、単調なテンポの中にもいつ何が起きるかわからない緊張感がスクリーンから満ち溢れていた。それはグイグイと引き込む類の強力な磁力ではないが、極限状態で少年兵と心を通わせるシーンはストックホルム症候群の実例を見ている気分だった。。。

オススメ度 ★★*

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