こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ノーコメント by ゲンスブール

otello2013-07-11

ノーコメント by ゲンスブール Je suis venu vous dire...

監督 ピエール=アンリ・サルファティ
出演 セルジュ・ゲンスブール/ジェーン・バーキン
ナンバー 149
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

常に紫煙をくゆらせ酒を手放さない。無精ひげと眠たそうな目は二枚目には程遠い。体制や権威は嫌い、無類の女好き。どうしようもなくやさぐれた中年男の風体なのに、作詞作曲から演奏、映画監督までこなす多彩な才能の持ち主。死して20年以上経ってなお伝説は色あせず人々の心に生き続ける。セルジュ・ゲンスブール、映画は彼が産んだ歌の数々と波乱に満ちた人生を残された映像資料で綴る。ロシア移民のユダヤ人の息子、スラブとユダヤの血を引きながら知性はフランス人という男の己を貫き通すスタイルは、魅力的であると同時に刺激的だ。

ナイトクラブのピアニストの父に音楽を叩き込まれたセルジュは、画家になる夢も抱いていた。だがボリス・ヴィアンの曲を聴いて音楽一本に絞る決意をし、作詞作曲を手掛けるようになる。やがて最初のシングル「リラの駅の切符切り」でデビューする。

その後、私生活では離婚再婚を繰り返すが、フランス・ギャルに提供した「夢見るシャンソン人形」の世界的大ヒットで一躍人気作曲家になる。ところが彼の扇情的で挑発的な歌詞は時に世間から目の敵にされる。しかし、セルジュはそんなことは計算済み、むしろそういう拒否反応こそが自分の革新的な楽曲の価値を高めていると確信し、迎合を良しとしない。そして彼の姿は最先端を自認する表現者、特に女優たちに支持され、次々と浮名を流していく。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ただ、映画はそうしたセルジュの記録フィルムとインタビューで構成されるため、彼の伝記としてはなかなかその人となりが伝わってこない。いつごろの出来事なのか、世間にどういう影響を与えたのか、彼と同時代を生きた人間ならば理解したうえで懐かしさも覚えるかもしれないが、これだけでセルゲイのファンでない者に彼の人となりが伝わるだろうか。彼を直接知る人物に改めてインタビューするなどの工夫が欲しかった。

オススメ度 ★★*

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