こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

サイド・エフェクト

otello2013-07-13

サイド・エフェクト Side Effects

監督 スティーブン・ソダーバーグ
出演 ジュード・ロウ/ルーニー・マーラ/キャサリン・ゼタ=ジョーンズ/チャニング・テイタム
ナンバー 170
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

心も体も鉛の鎖で縛られ毒の霧の中にいるような気分が続き、思考とは別に手足が勝手に動き突飛な行動に走ってしまう。深刻なうつ病に苦しむヒロイン、彼女はやがて強力な副作用を伴う抗うつ薬に頼る。物語はそんな女が犯した罪のために窮地に陥った担当医が、事件の裏に隠された真実を暴いていく姿を追う。心身喪失状態で起こした殺人は罪に問えるのか。薬を処方した医師は責任を取るべきか。そして副作用を強く警告しなかった製薬会社の瑕疵はどこまで追求できるのか。クールで謎めいた空気をまとった映像は、人間だれもが他人の知らない別の顔を持つことを暗示する。

重度のうつ患者・エミリーは、出所したばかりの夫とやり直そうと努力している。ある日、彼女は自傷事故で入院、精神科医のバンクスから新薬を勧められる。それは症状を改善させるがエミリーは夢遊病を併発する。

肉体的には健康で外見は元気そうに見えるのに、ちょっとしたきっかけで精神のバランスが崩れるエミリー。一方で英国のアクセントが鼻につくバンクスはどこか患者を見下した態度をちらつかせる。映画はまずこの2人の立場を鮮明に印象付け、のちにエミリーが夫を刺殺し原因が新薬の副作用と判断されると、か弱い患者対高慢な医師および製薬会社という構図を浮かび上がらせる。あくまでエミリーは、新薬とそれを処方したバンクスの未必の故意による被害者、殺人容疑については条件付き無罪を勝ち取る。バンクスの評判は地に落ちるが、同時にエミリーの挙動にも不審を抱き始める。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

失職の危機に瀕したバンクスは身を守るために独自に調査を進めるが、その過程で様々な妨害を受け、さらに状況を悪化させる。嘘をついているのは誰なのか、背後から糸を引いているのは何者なのか、ようやく自分がハメられたと気づいたバンクスは、一発逆転の秘策を練る。巧妙なストーリーテリングと鮮やかなどんでん返し、S・ソダーバーグの演出は洗練を極め、先の展開が読めない上質のミステリーに仕上がっていた。

オススメ度 ★★★★

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