こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

バーニー みんなが愛した殺人者

otello2013-07-16

バーニー みんなが愛した殺人者 BERNIE

監督 リチャード・リンクレイター
出演 ジャック・ブラック/シャーリー・マクレーン/マシュー・マコノヒー
ナンバー 173
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

陽気で人当たり柔らか、よく気が回り歌もうまい上に気前もよい。そこにいると場が明るくなり、悲しみに暮れている人々を和ませる。そんな人気者が、いつしか大富豪で嫌われ者の老婆に取り入って、孤独な彼女の寝室にまで出入りするようになる。もちろん愛などはない、だが彼の目的は老婆の財産でもない。ただ誰かのために尽くし喜んでもらうのが生き甲斐のような男がなぜ彼女に殺意を抱いたのか。テキサスの小さな田舎町、物語は主人公がいかにして殺人者となったかを描く。彼を知る者は誰も悪口を言わない、老婆を知る者は彼女の悪口しか言わない。根っからの善人なのか否か、人間の良心の在処を問う。

葬儀ディレクターのバーニーは、地元の名士の葬儀で未亡人のマージョリーと知り合う。高慢で自己チュー、肉親とも不仲なマージョリーを慰めるうちに、バーニーは彼女の身の回りの世話を任される。

マージョリーに連れまわされて旅行や食事など贅沢を楽しむバーニー。今まで体験できなかったファーストクラスの人生を謳歌する。一方でマージョリーの束縛はきつくなるばかりで、あまりの横暴にバーニーは衝動的に銃の引き金を引いてしまう。しわくちゃばあさんだったマージョリーがバーニーを手元に置くうちに若返り、同時に傍若無人ぶりにも拍車がかかる。その変化をシャーリー・マクレーンが嫌味ったっぷりに演じ、乾いた笑いを誘う。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

はたしてバーニーはとんでもないウソつきなのか。バーニーとマージョリー2人だけのシークエンスはバーニーの証言に基づいているはず。検事のダニーがその矛盾を突いて善良な顔の下に潜む邪悪な一面を暴いたならば、それはある種の“毒”として教訓になっただろう。ところが映画はあくまで住民が信じるバーニー像を守り続ける。しかし、ゲイ疑惑を始めほとんど私生活を明かさない彼の外面からは、心の闇を隠しているようにも見える。あえてそこにカメラを踏み込ませないことで、かえってバーニーという男の不気味さを際立たせていた。

オススメ度 ★★*

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