こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ベルリンファイル

otello2013-07-17

ベルリンファイル

監督 リュ・スンワン
出演 ハ・ジョンウ/ハン・ソッキュ/リュ・スンボム/チョン・ジヒョン
ナンバー 172
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

情報が漏れている。命が狙われている。極秘のはずの商談に乱入してきた複数の武装グループ、罠なのか、裏切りなのか、わけのわからぬまま男は傷つき、逃げる。冒頭、階段を駆け上り屋上を飛び行く手を阻む敵を素手で倒しながら疾走する映像は、圧倒的な臨場感をスクリーンから発散させる。様々な国のスパイ機関が今も活発に非合法活動を続けるベルリン、物語は祖国から切り捨てられた北朝鮮工作員の逃避行を追う。忠誠を疑われ、潔白を証明するためには妻を告発しなければならない。絶体絶命の危機に陥った主人公の苦悩がリアルに再現される。

アラブ武装組織との武器売買交渉中、モサドと韓国情報院に襲撃された北朝鮮工作員・ジョンソンは、北朝鮮側に内通者がいると確信する。そんな時、ジョンソンは妻・ジョンヒの亡命計画とを知る。

さらに本国から送り込まれてきた監視役・ミョンスが暗躍、証拠でっちあげてジョンソンの退路を塞ぐ。ここに登場する北朝鮮人たちはエリート中のエリート、だが「祖国統一萬歳!」と叫ぶようなガチガチの政治局員ではなく、焦りや恐怖といった弱さを持つ血の通った人間として描かれる。特にジョンソンの希望となるのは妻に対する愛の深さであり、自分以上に彼女を守ろうとする勇気こそが戦いの原動力になっている。彼を戦闘マシーンではなく、感情を秘めたキャラクターに設定したことで、作品世界の奥行きが広がっていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

映画は南北スパイ組織内の対立と各国スパイ同士の虚々実々の駆け引きを並行させ、時にジョンソンと韓国工作員のジンスを交錯させてアクションに化学反応を起こそうとする。雑踏、地下鉄、カーチェイス、銃撃戦、そして1対1の格闘、それらめまぐるしい展開は息つく間もない。ただ、多くの組織と人物が登場し、それぞれの思惑で離合集散するので、非常に混沌とした印象になる。ジョンソンの視点を中心に構成したほうがすっきりと引き締まったに違いない。。。

オススメ度 ★★*

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