こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

V/H/S シンドローム

otello2013-07-19

V/H/S シンドローム V/H/S

監督 アダム・ウィンガード/デヴィッド・ブルックナー/タイ・ウェスト/グレン・マクエイド/ジョー・スワンバーグ/レイディオ・サイレンス
出演
ナンバー 139
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

知人の家に遊びに行って、編集されていないホームビデオを延々と鑑賞させられた経験がある人は多いと思う。映っているのはほとんど知らない人ばかり、楽しんでいるのは当事者だけで、撮影テクニックに凝っているわけでもなく、だらだらとヤマ場のないシーンが連続した時の精神的苦痛は耐え難いものがある。映画は、興味のない他人が撮ったビデオを見せられた不快感を観客に過度に味あわせたのちに驚かせ、怖がらせてくれる。もはや手あかのついた手法ながら、新たなオリジナリティをプラスし、戦慄を加速させている。

あるビデオを探してほしいと依頼を受けた不良グループ4人組が、古い一軒家に忍び込み大量のビデオテープと老人の死体を見つける。目的のビデオを見つけるために彼らは1本ずつビデオを再生していくが、そこにはおぞましい殺人の記録が残されていた。

一応「素人ビデオ」の前提のため映像は荒くたびたびブレ、デジタルノイズが頻繁に出る。見え透いた演出はもういいよと言いたくなるのだが、これはお約束。なぜプロカメラマンでもない撮影者が命の危険にさらされているのに対象にレンズを向け続けるのかというツッコミも野暮。そんな中で、カメラを仕込んだメガネをかけてナンパに出かけるエピソードのみは撮影者の感覚を共有し感情がダイレクトに反映され、非常にスリリングな出来だった。目が異様に大きな女が突然牙をむき、血まみれになりながら襲い掛かってくる場面は、追い詰められた者の恐怖と絶望がリアルに伝わってきた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

他のエピソードも、あえて映像に手を加えないことによって、見る者に混乱と退屈をもたらした挙句、最後に死に追いやるパターンを踏襲する。中でもスカイプで会話する男女のエピソードは秀逸。パソコン画面の右下に写り込んだ受信している男が、パソコンに向かっている女の狂気と彼女の周囲に異変を感じつつも、何の手出しもできないもどかしさが再現され斬新だった。

オススメ度 ★★

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