こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

爆心 長崎の空

otello2013-07-23

爆心 長崎の空

監督 日向寺太郎
出演 北乃きい/稲森いずみ/柳楽優弥/北条隆博/渡辺美奈代/佐野史郎/杉本哲太/宮下順子/池脇千鶴/石橋蓮司
ナンバー 175
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

母を亡くした娘と子供に先立たれた母。伝えられなかった言葉と叶えられなかった願いは、後悔となって彼女たちを苛む。“いつまでもあると思とったものが一瞬でなくなる”、そんな突然の喪失感から立ち直れない2人のヒロインの、大切な人にもう会えないという気持ちが切ない。映画は哀しみに打ちひしがれながらも必死で乗り越えようとする彼女たちの姿を通じて、命こそ希望であると訴える。そしてその思いは、キリシタン弾圧と原爆の悲劇を経験した長崎市民の精神的な支柱になっているのだ。

女子大生の清水(きよみ)はデート中に母が急死したのを気に病んで、恋人と別れてしまう。1年前に幼い娘に急逝された砂織はいまだ幻覚に悩まされ、2人目の妊娠を素直に喜べない。清水と砂織は偶然出会い、お互いの心にたまった澱を吐き出すように語りだす。

砂織の両親は被爆者、清水も被爆3世らしい。だが、これらの設定は彼女たちの現在とどうリンクしているのか。長崎市民の間では被爆体験が濃厚に語り継がれていると思うが、砂織の両親は取材を拒んでいるし、清水の日常に原爆の影はない。2人に共通しているのは肉親の死で必要以上に己を責め続けていることだけだ。原爆で自分以外の家族全員が死に、一人生き残ったのならば彼女らの心情も理解できるが、彼女らの母や娘は一般的な病死。悲しい出来事には違いないが、被爆生存者の感情と同列に論じるのは乱暴だ。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

また、清水の幼馴染の勇一が砂織の妹・美穂子に逆ナンされたり、恋人と別れた清水に接近したりと微妙に関係してくるが、敬虔なクリスチャンであるはずの彼が一人で暮らすバラックになぜか放火し自殺を図る。一応清水に救われるが、そこにタイミングよく自宅軒下で糸に絡まった白鷺の死体の埋葬に砂織一家がやって来る。8月9日は長崎に原爆が落とされた日、この日付は原爆にかかわった人やその子孫が不思議な力で不可解な行動をとる日だとこの作品は言いたかったのだろうか。。。

オススメ度 ★★

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