こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

そして父になる

otello2013-08-05

そして父になる

監督 是枝裕和
出演 福山雅治/尾野真千子/真木よう子/リリー・フランキー/二宮慶多
ナンバー 193
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

いわゆる“勝ち組”ライフを謳歌し、そこに居続けるための努力を惜しまないエリートビジネスマン。彼はひとり息子に過大な期待をかけているが、闘争心の乏しさに物足りなさを覚えている。そして息子が生物学上の子でないと知った時、“やっぱり”と口にしてしまう。息子を愛していないわけではない、でもどこかで引っかかっていた違和感、その原因がはっきりし、男はますます傲慢になっていく。物語は気付かずに他人の子を育てていた2組の夫婦が真実に直面し、戸惑い苦悩していく過程で、人生で一番大切なことを学んでいく姿を描く。2人の父・2人の母・2人の息子、それぞれの立場で現実を受け入れるしかない、彼らのリアルな感情が胸を締め付ける。

高級タワーマンションに住む野々宮の元に、彼の6歳の息子・慶多は新生児のときに病院で取り違えられた他人の子だったと連絡が入る。本当の息子・琉晴は斎木という小さな電気店夫婦に育てられていたが、弁護士の勧めで子供たちを元の親に戻すと同意する。

相手の家に試験的にお泊りする子供たち。貧乏でも子簿脳な斎木の家で、おとなしかった慶多は重荷をおろしたように生き生きし始める。一方の琉晴は無機質なマンション暮らしに馴染めない。上から目線の野々宮と同じ高さに視線をあわせる斎木、格差の対極でも、子供にとってどちらが心を開きやすいかは一目瞭然。頭でっかちの野々宮はなぜそうなるのか理解できず、カネで解決しようとさえする。2人の父親の人物像は極端に類型的だが、彼らの思考回路はわかりやすく整理されていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

もちろん野々宮も家族にいい生活をさせたいとは思っているのだろう、だが常に仕事優先で家庭は後回し。子供はそんな父親の身勝手さをきちんと見抜いている。慶多の気持ちをわかってやろうとしなかった、琉晴にも己のスタイルを押し付けてしまった。思い通りにならないのは自分が間違っていたからと反省した野々宮は、やっと父親らしくなる。人間は何歳になっても成長できる、野々宮の変化に少しだけ希望が持てた。。。

オススメ度 ★★★★

↓公式サイト↓