こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

オン・ザ・ロード

otello2013-09-04

オン・ザ・ロード ON THE ROAD

監督 ウォルター・サレス
出演 サム・ライリー/ギャレット・ヘドランド/クリステン・スチュワート/エイミー・アダムス/トム・スターリッジ
ナンバー 213
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

セックスとドラッグとパーティ、まだ見ぬ世界に足を踏み入れた青年はたちまち溺れ、旅に出る。自分の殻を破るため、特別な友人と貴重な体験をするため、そして何より人生の真実を見つけるために。物語は作家志望の青年が風変わりな男と出会い、ニューヨークから中西部を経て西海岸まで往復する過程でかかわった人々とのひと時を描く。地平線に向かってひたすら伸びる道路、凍てつく真冬から抜けるような青空の夏、たそがれ時の太陽からネオンきらめく深夜まで、季節と時刻によってさまざまな顔を見せる風景が米国の大陸的な広さを実感させる。ところが、そこで繰り広げられるオチのないエピソードの数々は、青春の彷徨というにはあまりにも感情が希薄。もっと主人公の喜びや驚き、快楽や絶望に寄り添ってほしかった。

1947年NY、父の死に落ち込んでいたサルは友人にディーンを紹介され、常識や社会通念に捕らわれない彼の奔放な生き方に魅了されていく。後にデンバーに移ったディーンを訪ねるためにサルもNYを後にする。

複数の女と同時に付き合い、特にトラブルを起こさず人間関係を構築しているディーンは、男友達のカーロにまで片思いされるほど性的な魅力的の持ち主だ。だが、反抗するでもなく夢を追いかけているのでもない中途半端な存在で、ただ現実と真剣に向き合うことから逃げているようにしか見えない。当時の若者の代表としてサルは彼に影響を受けていくが、サルは傍観者に徹するだけ。旅を通じて成長するでも人情の機微を味わうでもない。彼らの言動にはまったく共感できなかった。この手の“純文学”は発表された当時は衝撃的だったのだろう。しかし、21世紀の現代ではやはり語りつくされた感がある。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがてディーンの裏切りと寂しい再会を経て、サルはやっとタイプに向かう。ディーンとの旅は彼の何かを変えたのだろう。ディーンを見捨てた呵責を執筆のエネルギーにするサルの姿が、彼の旅は始まったばかりだと饒舌に物語っていた。

オススメ度 ★★

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