こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

夏の終り

otello2013-09-05

夏の終り

監督 熊切和嘉
出演 満島ひかり/綾野剛/小林薫
ナンバー 215
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

好きという気持ちに正直に生きる女と、彼女を受け止める男。一見平和なカップルに見えるが、女はかつて夫と子供を置いて年下の愛人と駆け落ちした過去を持ち、男は正妻との家庭を行き来している。本来ならば愛憎渦巻く修羅場となってもおかしくはないのだが、彼らの生活は奇妙な調和を保ち、違和感なく収まるところに収まっている。物語は、不倫関係にあるヒロインの家に、以前の愛人が現れたのをきっかけに起きる波紋を描く。もう若くはないが仕事は順調に進んでいる。その中で2人の男の板挟みになり、激情に流されそうになる女と、煮え切らない男たち。強さはもろさ、優しさは優柔不断、そして愛は幻想、映画は登場人物の感情を繊細なタッチですくい取る。

作家の慎吾と同棲中の染色家の知子の家に、元恋人・涼太が訪ねてくる。慎吾が妻の下に帰っているあいだに見舞いに来てくれた涼太との仲を復活させた知子は、歪んだ三角関係を続けるが、ある日、慎吾の妻からの手紙を見つける。

不倫相手である知子の存在を妻に認めさせて、涼しい顔で知子の家に出入りする慎吾。当然知子と涼太の交情も知っているが気にかけていない。しかもそんな状態が日常になっても平然としている。まさしく作家らしい慎吾のモラルの欠如はかえって微笑ましいくらい。一方の涼太は知子への思いを募らせ、もはや耐えられないところまで追い込まれている。知子は2人の間で巧みに愛とセックスを使い分ける。3人とも傷つき、苦しんでいる。それでも知子だけが困難乗り越えるしたたかさを持っているあたり、女の業を象徴していた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがて選択を迫る涼太に対し、知子は“愛よりも習慣”と慎吾を取る宣言をする。その慎吾も“居場所がない”と知子に泣きつく。どこまでも身勝手な男に対し、知子は自分の人生を歩む決意をする。恋多き女だが決して弱い女ではない、手に職を持つことこそ自立の第一歩であると身をもって示す知子は、凛とした美しさに満ちていた。。

オススメ度 ★★*

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