こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ジンジャーの朝 さよなら、わたしが愛した世界

otello2013-09-11

ジンジャーの朝 さよなら、わたしが愛した世界
GINGER & ROSA

監督 サリー・ポッター
出演 エル・ファニング/アリス・イングラート/アレッサンドロ・ニヴォラ/クリスティーナ・ヘンドリックス/アネット・ベニング/ティモシー・スポール/オリヴァー・プラット
ナンバー 222
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

迫りくる核戦争の危機、終末のイメージは多感な年ごろの少女に重く暗い影を落としていく。同時に周囲の大人たちが俗物に見え始め、自分だけがピュアな存在だと思い込む。物語は、同じ日に同じ病院で生まれた2人の女の子が双子の姉妹のように育ち、やがてそれぞれの道を歩みだすまでを描く。なんでも話し合った、秘密も共有した、いつも一緒にいた、だが禁断の一線を越えてしまった。様々な体験で視野は広がったが、思い通りに進まないことの多さに苛立ちは募るばかり。そんなヒロインが見つけた、大人への通過儀礼というにはあまりにも残酷な真実。揺れ動く彼女の感情をエル・ファニングが繊細に演じ切る。

1962年ロンドン、ジンジャーとローザは将来の夢を無邪気に語り合いながらも、生きる目標を探す17歳。反核反戦集会に顔を出したりしながらも日々過ごしている。ある日、ジンジャーは父・ローランドとローザが付き合っているのを知る。

ソ連のミサイルがキューバに配備され、東西陣営はまさに一触即発、いつ始まるともしれない核戦争にジンジャーは気が気ではない。一方で周りの人々は、人類滅亡の瀬戸際であるのに関心が低く、その態度がジンジャーには腹立たしい。特に、かつてアナーキストとして投獄された経験もあるローランドは“人生を楽しめ”と、個人の生活を優先させる。それどころか、家出してきたジンジャーを泊め、隣の部屋でローザとセックスする始末。そこにあるのは世界が核戦争で壊れる前に、家族や友人関係といった最小単位の世界が崩壊してしまう皮肉。親友と父に裏切られたジンジャーの苦悩が切なくリアルだ。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

それでも、ジンジャー以上にショックを受けた母が卒倒すると、ジンジャーは健気に病院で母の回復を待ち続ける。本当は彼女自身も心が千々に乱れているのに、弱い母親を前ではしっかりしなければならない。そうした思いがジンジャーを強くする。自らの願いを詩に託して大人への一歩を踏み出す彼女の、成長した姿がまぶしかった。

オススメ度 ★★*

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