スティーブ・ジョブズ JOBS
監督 ジョシュア・マイケル・スターン
出演 アシュトン・カッチャー/ダーモット・マローニー/ジョシュ・ギャッド/ルーカス・ハース/J・K・シモンズ/マシュー・モディーン/ジェームズ・ウッズ
ナンバー 210
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています
アイデアは極めて斬新、実現させるまでは一切の妥協を許さない。一方で目標を達成するためには平然とハッタリをかまし仲間を切り捨てる。カメラはそんな主人公の栄光と挫折、そして復活までの波乱の人生を追う。そこで描かれるのは理想の商品を作ろうという純粋な意志をもった“表の顔”以上に、傲慢でうそつきで平気で人を裏切る鼻持ちならない男の実像。友だちなんかいらない、必要なのは技術とモチベーションが高い同志。孤独でもかまわない、称賛を浴びれば。彼の生き方はもはや常人の理解を超え、天才とはこういうものなのかと受け入れるしかない。
大学中退後ゲームメーカーに就職したジョブズは、優秀だがトラブルメーカーで、上司も手を焼いていた。ある日、友人のウォズの自作キットを見たジョブズはパソコン製作を思いつきアップル社を創業、出資者のマイクを迎え製品化すると爆発的なヒットとなる。
市場のニーズに応えるのではなく、消費者に“持っているだけでクール”と思わせるアイテムで需要そのものを生み出す戦略は大当たり。だが映画は彼のサクセスストーリーより、むしろ創業メンバーでさえクビにする独裁者としての一面を掘り下げる。後に自分がスカウトした男にアップル社から追放されたり、逆にジョブズの復帰に骨を折った恩人を切ったりと、米国の会社経営における情け無用の複雑怪奇な実態が実感できた。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
“本気で世界を変えようとした者だけが、世界を変えられる”。その言葉通り、パソコン、CGアニメ、ミュージックプレーヤー、スマホ、タブレット端末の分野で次々と革命的な新製品を開発した彼の功績は、人類の進歩に寄与したといっても過言ではない。誰もが考えているけれど無理だと決めつけて行動に移さないことを実行するだけでは、“普”の成功しか手に入らない。しかし、歴史に名を残すような人物は誰も発想しなかったことをゼロから始め完成させる。“Think different”に凝縮されたジョブズの思想は、自由な社会が続く限り永遠に色褪せないだろう。
オススメ度 ★★*