こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ウルヴァリン:SAMURAI

otello2013-09-17

ウルヴァリン:SAMURAI The Wolverine

監督 ジェームズ・マンゴールド
出演 ヒュー・ジャックマン/福島リラ/ウィル・ユン・リー/ファムケ・ヤンセン/ハル・ヤマノウチ/TAO/真田広之/スベトラーナ・コドチェンコワ
ナンバー 226
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

三助おばさんにたわしでこすられたり、寺の坊さんがみな刺青を入れたヤクザだったり、剣道稽古や忍者軍団がやたら空中で回転したり、上野から乗った新幹線が西に向かったり、場末のラブホテルの奇妙なコンセプトに面食らったり、東京‐長崎間がクルマでひとっ走りだったり……。不老不死を誇るミュータントも、古い因習・伝統と洗練された技術力が混在する不思議の国・ニッポンでのアウェイ戦はハプニングに見舞われっぱなし。あくまでコミックの映像化という前提の下、日本を訪れた経験がない米国人の日本へのイメージを見事に再現している。むしろ笑いを誘うほど戯画化されたシチュエーションに対するディテールへのこだわりが、映画にユーモアをもたらしている。

隠遁生活を送っていたウルヴァリンは、戦争中に命を救った日本人実業家・矢志田に東京に呼ばれが、重病の矢志田はウルヴァリンに死を与えると言い残して息絶える。ウルヴァリンは葬儀会場で誘拐された矢志田の孫娘・マリコを救い逃亡する。

永遠に生き続けるのは永遠の苦みなのか。愛した者にはいつも先立たれ、思い出はいつしか悪夢にかわって熟睡できる夜はない。そんなウルヴァリンが、初めて治癒能力を失い、傷ついていく。気を失うほどの痛みと出血が限りある命の証。無為な長生よりは目的のある死を選ぶ、その精神が人間を進化させてきたとウルヴァリンは知る。長崎の田舎で村人と交流したウルヴァリンは、限りある命だからこそ他人と交わりを大切にし、精いっぱい生きる充実感を学んでいく。そして、自分を必要としてくれる日本人と積極的にかかわることで己の人生に意味を持たせようとする。この戦いはウルヴァリンの「自分探しの旅」なのだ。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

飛び道具や念力ではなく、ウルヴァリンの武器は屈強な肉体と鉄をも切り裂く爪。不死身だがサイキックや飛び道具が使えず、敵とは正面から対峙しなければ倒せない。その結果、アクションシーンは肉弾戦がメインになり、CGに頼る大量破壊よりも、より手に汗握るスリルが味わえた。

オススメ度 ★★★

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