こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

エリジウム

otello2013-09-23

エリジウム ELYSIUM

監督 ニール・ブロムカンプ
出演 マット・デイモン/ジョディ・フォスター/シャールト・コプリー/ディエゴ・ルナ
ナンバー 230
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

劣悪な住宅に押し込まれた労働者は工場での危険な作業を余儀なくされ、大けがを負ってもほとんど補償されない。19世紀の工業国を思わせる格差社会、搾取される側は最低限の権利さえ与えられず貧困にあえいでいる。他方、楽園に暮らす富裕層は先進の医療を施され、健康で快活な生活を享受している。人口増によって荒廃した近未来の地球、物語はスラム化したLAから脱出しようとする男の冒険を通じて、人が人として生きる意味を問う。高圧的なロボットの警官や役人に卑屈な態度をとる主人公が、権力に対して怒りより恐れを感じている、そんな希望なき“負け組”に生まれた彼の諦観が哀しい。

勤務中の事故で余命5日を宣告されたマックスは、富裕層が移住した人工衛星エリジウム行きのシャトルに乗るために、工場の経営者を襲ってデータを奪う。エリジウムのNo2・デラコート長官は工作員のクルーガーにマックスの身柄を確保するよう命じる。

経営者はマックスら労働者にバイ菌を見るような目で接し、デラコートも不法侵入者のシャトルを容赦なく撃墜するなど、地球人の命など顧みない冷酷な特権意識を持っている。選民思想が支配層の常識になり、科学技術は進んでも人間の理性は後退しているあたり、行き過ぎた自由主義経済の暗い未来を予言しているようだ。一方、補強具を体に埋め込まれたマックスはクルーガーの追跡を巧みにかわすが、自分の脳にコピーしたデータが世界を変える可能性があると知り、自らクルーガーのシャトルに乗り込んでエリジウムに向かう。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

エリジウムに着陸したマックスは幼馴染のフレイ母娘の命も救おうと大活躍するが、そこにデラコートのクーデター計画や、秘密を知ったクルーガーの反乱などを盛り込んだために、いたずらに話が入り組んでアクションの切れ味を殺いでいる。もちろん人間はみな己の欲望に忠実に動く。それはマックスも同じなのだが、それでもマックスの愛と自己犠牲にテーマを絞っていれば引き締まった展開になったはずだ。

オススメ度 ★★*

↓公式サイト↓