こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

マイク・ミルズのうつの話

otello2013-09-27

マイク・ミルズのうつの話
DOES YOUR SOUL HAVE A COLD?

監督 マイク・ミルズ
出演
ナンバー 218
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

心が鉛になったように重く、押しつぶされる苦しみに襲われる。生きていてもつらいばかり、いっそのこと死んでしまいたいと思いつつ、なかなか実行に移せない。睡眠中は現実を忘れさせてくれるのでベッドから出られないetc. それが病気として一般的に認知されたのは古い話ではなく、21世紀になって米国の製薬会社がキャンペーンを張ったからだという。ある程度抗うつ薬で症状が抑制できる、でも薬をやめるとまた気分が落ち込んでしまう。映画は毎日数種類の抗うつ薬を服用し続ける5人の日本人の日常に密着し、彼らが何を考えどう暮らしてきたかを追う。

母と同居しているミカはうつ克服しようと毎日嫌いな酢を飲んでいる。眠っているときが一番幸せというカヨコは自殺願望が消えない。酒もタバコもやめられないダイスケは当然抗うつ薬もやめられない。両親と同居中のタケトシは自立の道を探っている。

5人の登場人物の中ではケンがいちばん個性的。半ケツ状態のホットパンツにハイヒールを履いて街に出る典型的なゲイファッション。人あたりも話し方もごく普通で、心を病んでいるようには見えないし、ゲイに対する偏見と闘っているわけでもない。何が彼を追いこんでいるのか、結局は彼自身にもわからない。唯一、縄師に縛られ吊るされる瞬間は心が解放される。ケンだけは自分なりにうつとの付き合い方を学び実践し、己の置かれている状況を何とか快適なものにしているように見えた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

我慢できない、集中力がない、長続きしない。そんな精神的な弱さを“病気”と受け止め、病気だから仕方ないと弱い己を肯定する。しかし、彼らはそこに甘えてしまって弱さを克服する努力はせず、うつではない無理解な者からは“怠け者”に見えてしまう。映画は彼らに寄り添うが、決してうつ病の啓蒙や製薬会社に対する声を上げたりはしない。そういった“正義感”ぶった問題提起をしない分、なじみやすかった。。。

オススメ度 ★★*

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