こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

イップ・マン 最終章

otello2013-10-02

イップ・マン 最終章 葉問

監督 ハーマン・ヤウ
出演 アンソニー・ウォン/ジリアン・チョン/ジョーダン・チャン/エリック・ツァン/イップ・チュン
ナンバー 239
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

武術家でありながら、哲学者のようでもある。いかなる時でも表情を変えず呼吸も乱れないない物静かな風貌は、達人の域にあることを示す。床に置いた新聞紙の上から一歩も動かず攻撃をしなやかに受け流し、相手の力と体重を利用して、最小限の動きで反撃するテクニックは芸術的。武術とはケンカの道具ではなく己の鍛練につかうべきもの、パワーやスピードで強さを誇示するのではなく、それらを合理的に使いこなすところに奥義がある。もはや老境の主人公は自らの肉体を鍛えるのではなく、いかに武術を人生に生かすかを模索する。そして彼の思想はより洗練され、ブルース・リーに受け継がれていくのだ。

1949年、香港に拠点を移したイップ・マンは雑居ビルの屋上に詠春拳道場を開く。弟子たちは労働争議に参加したりするうちに、白鶴道場の弟子たちとイザコザを起こし、イップは道場主のン・チョンと闘う羽目になる。

イップもンもお互いの力量を図るためにまず問答を交わし、相手を値踏みする。そこには敬意を払うという礼節が重んじられ、求道者にのみ許された駆け引きが緊張感を誘う。また、地面に突き刺された数十本の太い杭の上で獅子舞を舞いながら繰り広げられるカンフーアクションはスピーディかつスリリングで、こんなスタントを考え出す香港映画人の意気込みに敬服した。一方で中国と香港の対立のなかで妻に先立たれ、歌手のジェニーと暮らし始めるイップの人間的な側面を追いつつ、時代は下っていく。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがて、弟子のひとりがアングラファイトで九龍城の黒社会とトラブルになると、イップは弟子を率いて救出に向かう。敵味方大勢のファイターが入乱闘する中で、イップは拳だけでなく棒術を披露するし、ギャングのボスは鉤爪を使うなど、このシーンはまさに「燃えよドラゴン」のクライマックス。イップ・マンの物語を描いていても、やはり香港映画の源流はブルース・リーにあると、改めて思い知らされた。

オススメ度 ★★*

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